1, Side Mimidori

布団に入っても、ずっと、記憶喪失になったことをぐるぐる考えた。
昨日までは普通だったはずなの…。でも過去の記憶を思い出そうとしても、出かけた日の記憶とか、部屋にいた記憶とか、なんかボヤボヤしてる。一人でいたような、誰か他にも人がいたような。
…そう、ナンパされて危なかったときは、確かに誰か助けてくれたよね?
でも、誰だったっけ…?
そういえば、一人で歩くと危ないって、もともと結蓮とか結蘭に言われたことだったっけ?
もっと別な誰かに言われたような気がするんだけど…。

…それが全部、思い出せないの。
思い出せなくなるくらい、頭を強く打ったのか…。でもそれだったらきっと結蓮たちのことも忘れてるはずで。
そんな、ピンポイントで特定の誰か、特定の何かに関することを忘れるなんて、そんなこと、あるのかな…。
頭を打ったとかじゃなくて…もしかして…私が病気か何かで…?


それから数日間ずっと、なんとしても思い出したくて、考えてた。
でも、考えても考えても、その…確かにいたはずの人のことはずっと思い出せない。

ただ、一つだけ、憶測でしかないけど、考えたこと。
私はゲーセンに行ってた。だから、もしかしたらその辺の知り合いなのかも、って……。
今の自分に考えられるのは、そのくらい。
それしか、思い浮かばなかった。

でもそんなことを考えても、また私の中で「本当にそうなのかな?」って考えてる。
そもそも、そんな知り合いのこと、忘れちゃうかな…?
結蓮とか結蘭のことは覚えてたよね…?
同じくらい、そこまで大事な知り合いだったんなら…覚えてるはず…。

やっばり。
その人となにかあったってことだけはわかるのに、誰だったのか、何があったのか、どういう人なのか…それが、思い出せない。
思い出せそうなのに。これだけ考えたら普通は思い出せるもんなのにね…。



「…思い出させればいいでしょ。」
結蓮が、誰かに電話してた。
「…なんでそんな事言うの。」

きっと私のことだな…って思ったけど、その辺の記憶が思い出せないから、思い当たることがあるようなないような、変な気持ちになって、部屋に戻った…。
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