5月

ある夜、バー"風の魚"では、スクリーンに映る大画面のゲーム画面を皆が見ながら時折ガヤガヤと声が上がる中、カウンターに座っていた一部のメンバーが話をしている…。

「…バラが見頃な季節になったよねぇ。」
赤色のカクテルを見ながらそう言った常連客の言葉に、反対の厨房側から思い出したように口を開く結蓮。
「そうそう…世の中には、トゲが殆ど無いバラなんてのもあるんだってよ?」
…後半、ややわざとらしく、座っていたクールに聞こえるように言った。バラは棘があるのが普通だというのが全員の共通認識だったようで…流石のクールも顔を上げた。
「……へぇ。」
「確か日本の品種だったと思うけど…なんかちょっとあのヒトみたいだよね。」

……が、結蓮がそう言いながら顔を向けた先からは、向こうで据え置き機から伸びたコントローラーを握りながらあれこれ喋っている人間の、そこそこ大きな叫びが聞こえてきた。
「なぁんでそっちが崩れるんですか!?」
普段はこの街の並の人間よりも温厚…だと思われている彼女、ミミドリだが、どうやらこの場合は違うらしいのである。
「やめろって…グルグルすんなバカぁ!」

…そんな彼女の様子を見て、今度は厨房に戻ってきた結蘭がその会話に突っ込みを入れた。
「…トゲ大アリの間違いじゃねぇかよ。」
これに笑いながら返す常連客に肩を叩かれて、クールは渋い顔になりながらも、その言葉にフッと笑って肯定するのだった…。
「たぶん、ウ◯ジャマ・◯ミーみたいにゲームのコントローラーを握ると性格が変わるタイプなんだよ…。なぁ?」
「……確かに。」
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