Precious EGG
冗談言いながらへらへらした顔で去っていく男の背中を見送って、視線を手前に戻すと、相変わらず、状況に混乱して途方に暮れている、間抜けな顔がある。
「怪我は?」
「…してないよ。」
無理に気を戻しているようにも見えたが…その手を握り直して、来た通りに戻るように俺が歩き出すと、また横から声が届いた。
「…ありがとうね。」
「…当たり前だ。」
さっきから見に来ていた人間の中でも、未だに、その場に残るなり、周りの店の隅の壁にもたれるなりして、こっちを見ている奴らが多くいる中で、余計にむず痒くなったんだろう…礼を言ったこいつの顔は俺の顔を見上げていたが、変わらずぎこちない表情だった。
その周りの視線にも、おそらくは、見る奴によって違った意味がある。物珍しさ、俺達の関係を悟る心境、好奇心、あるいは…さっきの奴らと同じような、獲物としての認識。
あの男達がどんな人間なのか正確には分からないまでも、こいつのことを相当な金持ちやどっかの組織の娘とでも思ったか、慣れていないことを悟ったか、そんなところだった。大抵はそうじゃなきゃ用心棒はつかない。それだけ金のある出所の人間だと思ったんだろうが、そんな簡単に俺をヤれると思ったのがバカだったな。
ただ、こいつの素性を知っているからなのか、それとも、俺がこいつにそれほど心酔しているということなのか…それは分からないが、この社会では普通のことだと片付けられちまうようなことでも、こいつには標的にはなって欲しくないといつも思うもんだった。
今回はこいつが荷物を持つのを買って出たことで、余計に…いいとこの人間だと思われる原因になっていたんだろうとも取れる。その荷物が、義理の家族とは言え、そいつからのオツカイとやらに行かされただけの荷物だとは、周囲の奴は知る由もないだろう。
…最も、ただでさえこいつはこの荷物を持ってなくとも、何も知らない人間から見れば、慣れてない奴、いいとこの人間、そう見える…。
引き返す中、行きで見てきた店並びを思い返して、人だかりの前で足を止めた。
「…んじゃ、お釣りね。」
何種類かの岩石や火成岩で作られた石玉と木製の玉が交互に通されて作られたネックレスを手に取って、買った。丁寧な研磨と加工がされて、それぞれの玉の表面には光沢がある。
「…あ、ちょっと待って。」
ペンの五色セット…。最初はこいつがそれを持つ理由に心当たりがなかった。
「…ハイ、ちょうどねぇ。」
「…卵に描く用。」
店主に渡されたそれを紙袋に一緒に入れながら、見ていた俺にそう言う表情は、さっきより元の調子に戻っていた…が、それも束の間、俺が持っていたネックレスを見て疑問に思った顔をしたところに、何も言わずに俺が掛けると、また間抜けな表情に逆戻りする。
「……え?……ぇ…?」
「さっさと帰んぞ。」
また俺とネックレスを順番に見て、目線が下を向いたまま固まった表情を見ながら、その手を握った。
「怪我は?」
「…してないよ。」
無理に気を戻しているようにも見えたが…その手を握り直して、来た通りに戻るように俺が歩き出すと、また横から声が届いた。
「…ありがとうね。」
「…当たり前だ。」
さっきから見に来ていた人間の中でも、未だに、その場に残るなり、周りの店の隅の壁にもたれるなりして、こっちを見ている奴らが多くいる中で、余計にむず痒くなったんだろう…礼を言ったこいつの顔は俺の顔を見上げていたが、変わらずぎこちない表情だった。
その周りの視線にも、おそらくは、見る奴によって違った意味がある。物珍しさ、俺達の関係を悟る心境、好奇心、あるいは…さっきの奴らと同じような、獲物としての認識。
あの男達がどんな人間なのか正確には分からないまでも、こいつのことを相当な金持ちやどっかの組織の娘とでも思ったか、慣れていないことを悟ったか、そんなところだった。大抵はそうじゃなきゃ用心棒はつかない。それだけ金のある出所の人間だと思ったんだろうが、そんな簡単に俺をヤれると思ったのがバカだったな。
ただ、こいつの素性を知っているからなのか、それとも、俺がこいつにそれほど心酔しているということなのか…それは分からないが、この社会では普通のことだと片付けられちまうようなことでも、こいつには標的にはなって欲しくないといつも思うもんだった。
今回はこいつが荷物を持つのを買って出たことで、余計に…いいとこの人間だと思われる原因になっていたんだろうとも取れる。その荷物が、義理の家族とは言え、そいつからのオツカイとやらに行かされただけの荷物だとは、周囲の奴は知る由もないだろう。
…最も、ただでさえこいつはこの荷物を持ってなくとも、何も知らない人間から見れば、慣れてない奴、いいとこの人間、そう見える…。
引き返す中、行きで見てきた店並びを思い返して、人だかりの前で足を止めた。
「…んじゃ、お釣りね。」
何種類かの岩石や火成岩で作られた石玉と木製の玉が交互に通されて作られたネックレスを手に取って、買った。丁寧な研磨と加工がされて、それぞれの玉の表面には光沢がある。
「…あ、ちょっと待って。」
ペンの五色セット…。最初はこいつがそれを持つ理由に心当たりがなかった。
「…ハイ、ちょうどねぇ。」
「…卵に描く用。」
店主に渡されたそれを紙袋に一緒に入れながら、見ていた俺にそう言う表情は、さっきより元の調子に戻っていた…が、それも束の間、俺が持っていたネックレスを見て疑問に思った顔をしたところに、何も言わずに俺が掛けると、また間抜けな表情に逆戻りする。
「……え?……ぇ…?」
「さっさと帰んぞ。」
また俺とネックレスを順番に見て、目線が下を向いたまま固まった表情を見ながら、その手を握った。
