Precious EGG
市場のような場所。
人の多い中、部屋飾りやアクセサリーの店が並んだ通りを歩きながら見回っていると、ガキらしい声と柔らかいボールの弾む音が聞こえてくる。
狭い曲がり道に入って、またしばらく歩いてみると、カラーライトで装飾がされた水槽が重ねて置かれている場所に差し掛かる。熱帯魚やら金魚やら…小さい魚が種類別にそれぞれの水槽に入れられていて、横でこいつがまた興味深く眺めている…のを、さらに俺が横から眺めていた。
確かにその目線の先にある魚の尻尾は色で溢れていて、こいつはこういう物を見て育っているから俺とは違うんだろうなと…いつもの如くそんなことを思わされていた。こんな市場の片隅のボロ臭くて狭い裏通りに、こういう景色が存在するんだと実感させられた。
しかし、そんな時間も長くは続かない。
…ここじゃ当たり前といえば当たり前だが、少しそれを残念に思ってしまう自分がいた。
道の奥にいた、真っ黒なタンクトップの男が、こっちに向けてボールを飛ばす。
俺は反射的にそのボールを腕で受け流す。硬いボールではなかったが、さっきのガキが転がしていたボールが妙に頭を過った…。
「…うっ!?」
どうやら俺にボールを飛ばして、目を離した隙を狙おうとでも思っていたらしい。背後から来ていたもう一人が、横にいた恋人の首に腕を掛けて攫っていこうとする。
迷う時間も、その必要もなく。
向かってきた前方の男が無言で俺の両肩を掴んできたところを、逆に先制で腹部に拳を入れた。相手も…その風貌なだけあって、それで黙るような人間ではなかったが、さっきまで俺の肩を掴んでいた腕で拳を振り返そうとしたのを、姿勢を低くして躱すついでに、その腕を拾って強く引き寄せる。バランスを崩して前のめりになった男の腹部にもう一撃、今度は靴底でしっかり蹴ってから、ふらついて後退した男の頭に回し蹴りをお見舞いした。
倒れた男が、店の横に雑に積んであった、プラやら段ボールの空箱の山に突っ込んで、通りに鈍くて軽い転がる音が響く。さっきから、店にいた奴らだの、両側の通りからこっちを見に来た奴らだの、ちらほら距離を取ってその辺に集まってきていた人間達が、更に数人増えて、その音に声を上げる奴までいたぐらいだった。
…ミセモンじゃねぇっつの。
だがそんな俺をよそに、一人が軽くやられたのと、周囲に人が集まってきたことをまずいと思ったのか…もう片方は、ガヤガヤと声が上がって数秒、抱えていた恋人を離して呆気なく逃げ去った。倒れた片割れは、辺りに散った空箱に邪魔されつつ、俺から逃げるように這いながら立ち上がって、反対の通りによろつきながら逃げて行った…。
「…兄ちゃん、アンタすげぇよ。」
「……別に。普通だろ。」
こういう光景を楽しみとして消費するような雰囲気には、正直、少し腹が立つ。
それでも、目の前には無事だった恋人と荷物と、声をかけてくる男の姿があった。
「…また、連れてこうとしたんだ、お嬢ちゃんをな?…アンタやるねぇ。なんだ、ボディーガードってとこかい。」
「…まぁそんなとこだな。」
「マジでエッグハントになるとこだったな。でもアンタはつえぇから、そらねぇわな。」
人の多い中、部屋飾りやアクセサリーの店が並んだ通りを歩きながら見回っていると、ガキらしい声と柔らかいボールの弾む音が聞こえてくる。
狭い曲がり道に入って、またしばらく歩いてみると、カラーライトで装飾がされた水槽が重ねて置かれている場所に差し掛かる。熱帯魚やら金魚やら…小さい魚が種類別にそれぞれの水槽に入れられていて、横でこいつがまた興味深く眺めている…のを、さらに俺が横から眺めていた。
確かにその目線の先にある魚の尻尾は色で溢れていて、こいつはこういう物を見て育っているから俺とは違うんだろうなと…いつもの如くそんなことを思わされていた。こんな市場の片隅のボロ臭くて狭い裏通りに、こういう景色が存在するんだと実感させられた。
しかし、そんな時間も長くは続かない。
…ここじゃ当たり前といえば当たり前だが、少しそれを残念に思ってしまう自分がいた。
道の奥にいた、真っ黒なタンクトップの男が、こっちに向けてボールを飛ばす。
俺は反射的にそのボールを腕で受け流す。硬いボールではなかったが、さっきのガキが転がしていたボールが妙に頭を過った…。
「…うっ!?」
どうやら俺にボールを飛ばして、目を離した隙を狙おうとでも思っていたらしい。背後から来ていたもう一人が、横にいた恋人の首に腕を掛けて攫っていこうとする。
迷う時間も、その必要もなく。
向かってきた前方の男が無言で俺の両肩を掴んできたところを、逆に先制で腹部に拳を入れた。相手も…その風貌なだけあって、それで黙るような人間ではなかったが、さっきまで俺の肩を掴んでいた腕で拳を振り返そうとしたのを、姿勢を低くして躱すついでに、その腕を拾って強く引き寄せる。バランスを崩して前のめりになった男の腹部にもう一撃、今度は靴底でしっかり蹴ってから、ふらついて後退した男の頭に回し蹴りをお見舞いした。
倒れた男が、店の横に雑に積んであった、プラやら段ボールの空箱の山に突っ込んで、通りに鈍くて軽い転がる音が響く。さっきから、店にいた奴らだの、両側の通りからこっちを見に来た奴らだの、ちらほら距離を取ってその辺に集まってきていた人間達が、更に数人増えて、その音に声を上げる奴までいたぐらいだった。
…ミセモンじゃねぇっつの。
だがそんな俺をよそに、一人が軽くやられたのと、周囲に人が集まってきたことをまずいと思ったのか…もう片方は、ガヤガヤと声が上がって数秒、抱えていた恋人を離して呆気なく逃げ去った。倒れた片割れは、辺りに散った空箱に邪魔されつつ、俺から逃げるように這いながら立ち上がって、反対の通りによろつきながら逃げて行った…。
「…兄ちゃん、アンタすげぇよ。」
「……別に。普通だろ。」
こういう光景を楽しみとして消費するような雰囲気には、正直、少し腹が立つ。
それでも、目の前には無事だった恋人と荷物と、声をかけてくる男の姿があった。
「…また、連れてこうとしたんだ、お嬢ちゃんをな?…アンタやるねぇ。なんだ、ボディーガードってとこかい。」
「…まぁそんなとこだな。」
「マジでエッグハントになるとこだったな。でもアンタはつえぇから、そらねぇわな。」
