Precious EGG

兎が卵を運んでくるだか、神の復活の象徴、だか…。
文字や伝承だけで吹き込まれる大昔の神の復活なんて、信じられたもんじゃない。そんなもの本気で信じてるような奴は、よっぽど生温い場所で生きてるんだろうと俺は思っていた。
科学的にそういう方向に進歩を遂げない限り、死んだ人間は復活なんかしない。死んだらそれっきりだ。俺は色んな奴の死に様も亡骸も見てきたが、復活なんてのはまずあり得ない。
…そのまま骨になるか。邪魔も監視もない場所でいいように使われるか。焼かれるなり埋められるなり何かしらの処理がされるか…。
特に俺達が住む世界において、死のあとにあるのは、復活とは程遠いただの現実だけだ。

死んだ奴が復活するなんてのは、それこそ組織のトップや幹部の、仕事や記録、仕草までも共有管理されたような、ダミーの人間が用意されてる…なんて手口くらいだろう。
あるいは、神とやら…大昔の人間も同じような手口を使ったんなら、その時代から偽装の手は存在したことになるのか。そうなったら、もう「神」とは呼べねぇだろうな…。


…飾りのされた壁を見ながら、俺はまたそんなことをぼんやり考えていた。
イースター、ってのはただの名目だろうが…昼過ぎのバー、風の魚では、夕方からの客の引き込みの準備が進められている。

辺りには、何かを焼いているような料理油の匂いが充満していた。その匂いの出元…厨房から出てきた結蓮が、息をつきながら向かいのカウンターに座っていた俺に言った。
「…アンタ達、ちょっとお願いがあるんだけど。」
遠くのスクリーンのある方で据え置きゲームとPCの配線を弄っていたミミドリが、続けながらこっちを見て話を聞いている。
「…仕込みで離れられないから…ちょっと遠いんだけどさ、川の向こうの方に行ってきて欲しいんだよね…。」
「……こき使うってんなら俺はお断りだな。」
「…も~…アンタも一応家族みたいなもんなんだからね。そんなこと言わないでよ。」

…そりゃ一次的にこいつに会いに来るときはそうだろうけどな。
生きてる世界の違う人間に家族なんて言葉がよく言えるもんだなと…ため息をついた俺の前に置かれたのは、飾りやら衣類やら、今後使われるであろう物が書かれた紙…と、明らかに予算よりマシにされている五枚の札。

「…余った分でデートでもしてきな。」
「………わかったよ。」
まぁ、この額なら悪くないか。
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