感情 ― Episode 2 Cool

それから、たいして感情も表さなくなるまでの間。

今、こうやってその時を思い出してみたら、あっという間だ。実際その時は…特に初めのうちは、そういうことに揉まれるのが辛くて仕方なかっただろうけど。
詳しいことをよく覚えてないぐらいには、こういう世界は辛いとわめく時間はないし、そういうことを叫んでいる間に、どんどん自分の身が危なくなる。それを、身をもって学んだ。

でもよく考えたら、それで表に出すような感情が潰れてったのも、不思議な話なのかもしれない。
そう、最近は思うようになった。
…特に、あの時から長い時間が経ってから出逢った…あいつからしたら。

たぶん経験の量が違うし。生きてきた世界も、気の強さも、まるっきり違うからなんだろうけど。

あんな世界じゃ、弱い人間は自分のやりたいことも通せないで終わる。あの時、もし俺が、金なんかないと言っていたら…。良くてもあのまま突き飛ばされでもしてたんじゃないか。
同じような人間にならなきゃ、生きていけないと思った。
ここじゃ迷いにしかならない感情も、無駄だと思うものは捨てた…つもりだった。
それが、戻ってくるようになったのは…。

「しんどそうにしてたからさ…呼んじゃった…。」

紛れもない、あいつに会ってから。

「……なんかあったのかよ。」
「いや、別に何もなかったと思うよ。昨日まで普通だったし…。たぶん変な夢でも見たんじゃない…?」
結蓮が言うに、かなり調子悪そうにしてたらしい。
…また縮こまってるんだろうなと、なんとなく、階段を登りながら想像する。
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