感情 ― Episode 2 Cool
保身。その場しのぎ。生きるための手段。
最初は、そういうつもりだった。
壊滅状態になって廃墟街に変わったのは、幸いにもごく一部だけだったとは言えど…。大地震のあとしばらくは、自分を含めた大勢の人間が、とても生きる手段がない状態だった。
既に俺には家族もいないし、大陸からは離れて、落ち着ける場所も、食料もない。残ってるのは少しの金と今ある命だけ。
そんな俺の前に。
―― 有り金全部、寄越せ…。
刃物を突き付けてそう言う男がいた。
―― 金でなきゃ食い物でもいい…持ってるもん寄越せ…。
男の形相まではっきりとは覚えていなくとも…その瞬間に考えたのが複雑極まりないことだったくらいは記憶にある。
…下手に刺激したら、その刃物で切られるか、あるいは刺されるか、そのどっちかで、自分は死ぬんだろうか?
ただ、今ここで有り金を渡しても、自分の生きる術が削られるだけ…。それでも渡さなきゃ…現に今、目の前の男が、早くしろと言いたげに、刃物を更に突き付けてくる。
…もう渡すしかない。
残っていた最後の札を、ゆっくり静かに差し出すと、男がそれを俺の手からひったくって、そのまま何もしないで、飛ぶように去っていった。
結局、男は何もして来なかった。
自分の利益さえあれば、それでよかったんだろう。
そのときは、結果的に、命は無事だったから、安心した。
…そのときは。
それでも、実際、金は取られているわけで。
これまでできるだけ、最低限の水と食べ物に抑えて、消耗も減らしてきた。
最初は、そういうつもりだった。
壊滅状態になって廃墟街に変わったのは、幸いにもごく一部だけだったとは言えど…。大地震のあとしばらくは、自分を含めた大勢の人間が、とても生きる手段がない状態だった。
既に俺には家族もいないし、大陸からは離れて、落ち着ける場所も、食料もない。残ってるのは少しの金と今ある命だけ。
そんな俺の前に。
―― 有り金全部、寄越せ…。
刃物を突き付けてそう言う男がいた。
―― 金でなきゃ食い物でもいい…持ってるもん寄越せ…。
男の形相まではっきりとは覚えていなくとも…その瞬間に考えたのが複雑極まりないことだったくらいは記憶にある。
…下手に刺激したら、その刃物で切られるか、あるいは刺されるか、そのどっちかで、自分は死ぬんだろうか?
ただ、今ここで有り金を渡しても、自分の生きる術が削られるだけ…。それでも渡さなきゃ…現に今、目の前の男が、早くしろと言いたげに、刃物を更に突き付けてくる。
…もう渡すしかない。
残っていた最後の札を、ゆっくり静かに差し出すと、男がそれを俺の手からひったくって、そのまま何もしないで、飛ぶように去っていった。
結局、男は何もして来なかった。
自分の利益さえあれば、それでよかったんだろう。
そのときは、結果的に、命は無事だったから、安心した。
…そのときは。
それでも、実際、金は取られているわけで。
これまでできるだけ、最低限の水と食べ物に抑えて、消耗も減らしてきた。
