修行 ― Episode 5 Torao Onigawara

この道着の男は、比較的マトモだった。
しかし真っ直ぐ過ぎれば、逆に嘲笑の的になるというもの。
特に、この場所においては…。
「そんな割れない石ずっと叩いてるのが強くなるための修行?」
立っていた若者のこの一言で、元々静かだったこの場所の空気が、更に凍りついた。
「……そんなにワシに怒られたいんか。」
立ち上がった道着の男の姿を見て、若者は少しはっとする。

確かに、道着の男の体は、そこそこに老いているであろう歳にしては、やや大きかったのだ。それは決して太っているからというわけではない…。この時点で、引けばよかったものを…。

「…どうせおっさんの力でしょ。」
立っていた若者は、内心は焦りつつも、一歩前に出てきていた道着の男を、また嘲笑う…。今更、後には引けないからだ。
だが、次の瞬間。
「うわっ!」
若い男は、その頭を道着の男の大きな手の平にがっちり掴まれ、その歳とは思えない強い力で、引っ張り寄せられていた。
そして、急速に移動する上半身に慌ててついて行かせるように足を動かしたところで、背中に手刀の強烈な一撃をお見舞いされてしまった。
「いぃっ…!」
「ふんっ!」
鷲掴みにされていた頭を、半ば放り投げるような形で離さたために、若者はふらっとよろけた。とっさに後ろに足を出したのだが、背中の痛みも合わさって、立っていられなくなり、そのまま尻餅をついてしまう。
「ちょっ、やめっ、わかった、わかったから!」
痛みに耐えつつも脚を体の方に寄せて、急いで立ち上がりながら、若者がそう声を上げた。しかし、その言葉を聞き入れることなく、道着の男は一歩ずつ若者の方へ歩いて近づく。
「おい、おっさん…。」
見かねてそう言いながら入口の方から歩いてきた、もう一人の若者さえ、気に留めることはしなかった。
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