「行かないで」
これは、おそらくただ私が寂しかっただけ…だったはずの、奇妙な話。
EDENの暗い世界で、盗み殺しも含むような仕事や情報流しなんかで生きているクールは、私と付き合うようになってからはだんだん一緒にいてくれる時間が増えているとはいえ、もとの生活の拠点が裏社会だから、どうしても…2~3週間だったり、1ヶ月くらいだったり、とにかく、長期的にいないこともたまにある。
いつ帰ってくるのかも正直分からないし、聞いても困らせるだけなんだろうな、って思うから詳しくは聞かないけど、それでも、もしこれが最後になったら?とか、前に送り出した時が最後の会話だったら?とか…そんなどうしようもないことを考えちゃうこともあった。
こういう時、いつも浮かぶのは、行かないでって言えたらいいのにな…なんて、たぶん叶わないであろう願いばっかりで。
…それだけなら、たぶんけっこう普通の話に聞こえるんだろうけど。
私は、人前で泣くことや、この先に相手の嫌な顔があるんじゃないかと思ってしまう時に言葉を繋ぐことに対して、物凄く抵抗がある。
人一倍泣きやすい自覚があるのに、そこに抵抗感がある、って、ちょっと矛盾してるような気がするし…"これを言ったら相手がどういう反応をするんだろう?"と思うと、何も言えないことが多い。
…自覚があるからこそ、コンプレックスなのかな。
例えば、相手が何か自分の思い通りにいかない反応をしてきたとき。言葉を言い返すのもビビってしまうし、仮に言い返したとして、返ってきた言葉が結局また悪いものだったときに、どう言い返したら良いのか、そこまで不安になって頭を回してしまう癖がある。
そんな感じで、言葉や思考にすらどれだけ頼れるのか分からないってレベルなのを、自分でよく分かってるくせに。それが結局のところ自分ではどうしようもない。
言い返せる人って。自分の意見が言える人って。なんでそんなに堂々としていられるのだろうか。
たとえそれが、嘘や自分を守るためのものだったとしても、本当にそう思う。堂々とできる人、細かいことをいい意味であんまり気にしない人が、羨ましかった。
…自分のことを考えると、結局いつもそんな思考になって、自信がなくなる。
今となってはもう昔のこと。
―――『じゃあ、ちょっと役所行って来ちゃうからさ。』
―――『…そっか、もう出かける時間だった?』
『いい子で待ってるんだよ~。』なんてちょっとふざけて笑っていた親たち。
…あの時は特に何も予知できていたわけではなかったけど、もし引き留めて行かせなかったら、一体どうなってたんだろう。
もちろんそしたら、こうやってEDENにいる私はいないのかもしれない。そっちの世界線ではまた違う辛さがあったのかもしれない。でも、もし引き留めててあの二人が無事だったら、悲しい思いをすることはなかっただろうなと思う。
予知なんか普通はできるわけないから、今そんなことを言ったってどうしようもないし、何も変わるもんじゃないのもわかってるけど。
行かないで~って、ふざけて言ったら、あの時最後に手を振った二人は笑ったのかな。でも、きっと笑って「何ふざけてるの?」って言って、それで終わって…結局今と変わらない結末になっているような気がする。
―――『行ってらっしゃい。気をつけてね。』
こういう時、いつも辛いことを思い出してしまう。
過去は変えられないのに…。
…なんて、この3週間くらいまだクールが帰って来てない中で、またベッドでどうしようもないことを考えていて、悲しくなった。
一人で布団を被って泣いていたら、昼頃になるのにまだ寝てると思って起こしに来たユイレンに見られて、ちょっと気まずくもなった…。
「…また嫌なこと思い出しちゃったのかい?」
難しいことを何も言えなくて、ただ頷くと、そっと抱きしめられた。
「…あの人は今はいないけどね。きっとまたフラっと帰ってきて慰めてくれるよ。」
「…そうだね…。」
…今はそう思うしかない。
「寂しかったよー!って言ったら嬉しそうにするんじゃないかな。」
EDENの暗い世界で、盗み殺しも含むような仕事や情報流しなんかで生きているクールは、私と付き合うようになってからはだんだん一緒にいてくれる時間が増えているとはいえ、もとの生活の拠点が裏社会だから、どうしても…2~3週間だったり、1ヶ月くらいだったり、とにかく、長期的にいないこともたまにある。
いつ帰ってくるのかも正直分からないし、聞いても困らせるだけなんだろうな、って思うから詳しくは聞かないけど、それでも、もしこれが最後になったら?とか、前に送り出した時が最後の会話だったら?とか…そんなどうしようもないことを考えちゃうこともあった。
こういう時、いつも浮かぶのは、行かないでって言えたらいいのにな…なんて、たぶん叶わないであろう願いばっかりで。
…それだけなら、たぶんけっこう普通の話に聞こえるんだろうけど。
私は、人前で泣くことや、この先に相手の嫌な顔があるんじゃないかと思ってしまう時に言葉を繋ぐことに対して、物凄く抵抗がある。
人一倍泣きやすい自覚があるのに、そこに抵抗感がある、って、ちょっと矛盾してるような気がするし…"これを言ったら相手がどういう反応をするんだろう?"と思うと、何も言えないことが多い。
…自覚があるからこそ、コンプレックスなのかな。
例えば、相手が何か自分の思い通りにいかない反応をしてきたとき。言葉を言い返すのもビビってしまうし、仮に言い返したとして、返ってきた言葉が結局また悪いものだったときに、どう言い返したら良いのか、そこまで不安になって頭を回してしまう癖がある。
そんな感じで、言葉や思考にすらどれだけ頼れるのか分からないってレベルなのを、自分でよく分かってるくせに。それが結局のところ自分ではどうしようもない。
言い返せる人って。自分の意見が言える人って。なんでそんなに堂々としていられるのだろうか。
たとえそれが、嘘や自分を守るためのものだったとしても、本当にそう思う。堂々とできる人、細かいことをいい意味であんまり気にしない人が、羨ましかった。
…自分のことを考えると、結局いつもそんな思考になって、自信がなくなる。
今となってはもう昔のこと。
―――『じゃあ、ちょっと役所行って来ちゃうからさ。』
―――『…そっか、もう出かける時間だった?』
『いい子で待ってるんだよ~。』なんてちょっとふざけて笑っていた親たち。
…あの時は特に何も予知できていたわけではなかったけど、もし引き留めて行かせなかったら、一体どうなってたんだろう。
もちろんそしたら、こうやってEDENにいる私はいないのかもしれない。そっちの世界線ではまた違う辛さがあったのかもしれない。でも、もし引き留めててあの二人が無事だったら、悲しい思いをすることはなかっただろうなと思う。
予知なんか普通はできるわけないから、今そんなことを言ったってどうしようもないし、何も変わるもんじゃないのもわかってるけど。
行かないで~って、ふざけて言ったら、あの時最後に手を振った二人は笑ったのかな。でも、きっと笑って「何ふざけてるの?」って言って、それで終わって…結局今と変わらない結末になっているような気がする。
―――『行ってらっしゃい。気をつけてね。』
こういう時、いつも辛いことを思い出してしまう。
過去は変えられないのに…。
…なんて、この3週間くらいまだクールが帰って来てない中で、またベッドでどうしようもないことを考えていて、悲しくなった。
一人で布団を被って泣いていたら、昼頃になるのにまだ寝てると思って起こしに来たユイレンに見られて、ちょっと気まずくもなった…。
「…また嫌なこと思い出しちゃったのかい?」
難しいことを何も言えなくて、ただ頷くと、そっと抱きしめられた。
「…あの人は今はいないけどね。きっとまたフラっと帰ってきて慰めてくれるよ。」
「…そうだね…。」
…今はそう思うしかない。
「寂しかったよー!って言ったら嬉しそうにするんじゃないかな。」
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