———Cool

翌日の夕方。
普段やや生温い風を吹かせている場所での強盗が既に二件、そしてどちらも同じ人間の仕業。どうやら例の賞金首が逃走資金の調達を測っているらしく、俺は真っ先にそこら辺を当たろうと…その日は観察を目的に、しかしそれ以上の手がかりを得られずに、充てもなく彷徨っていたところだった。
夜は諦めようかと思っていた矢先。
以前も何回か来たことがあるような場所に来て、状況が一変した。
…深めのキャップでやや顔を隠しているが、腕に僅かに、あの賞金の張り紙と同じ面影を見せる入れ墨がある男。
本来であれば同業者の一人や二人、近辺に張り付いていたことだろう。
ただ、幸運なことに夕方の時間帯でそれらしい数は減っていた。
おそらくは昼間のうちに行動することを予測して張っている奴も多かったんだろうが、顔や特徴が目立ちにくい夕方や夜に行動するのが、そういう奴の心理であることを、俺は知っている。
あるいは、同業者側も…夕方や夜に表社会で行動してかえって怪しまれることを避けたいという心理のあるような…簡単に言えば俺や当の賞金首と同じような人間であるのか。
古い民家やら集合住宅やらが並ぶそこで、遠くからつけていくと、また古い商店にそいつが入るのが見えた。

俺が息を殺して近くまで行ったときには、そいつは既に企みを行動に移そうとしていたようで。
「…タバコ取ってくれ。」
「…どのやつだい?」
「……その場を動くんじゃねぇぞ。」
「…盗ろうってのかい。」
「邪魔するなら撃つ。」
入らなくとも、外に声が聞こえて、だいたの状況を察する。
「…俺はなるべく時間はかけないで穏便にやりたい。お前も…荒れるのは嫌だろうからな…協力しろよ。」
「…そんなことしたら自爆するよ。」
そういえば気の大きい女の店主だったと、その口ぶりで思い出す。
肝が据わっているのか、実戦経験があるのかは知らないが…。

…徐々に銃を構えながら下がってくる男。
「ゴホッ…!?」
こっちに気づいていなかったそいつの肩に向けて、背後から踵を振り下ろす。
銃を落として前向きに崩れるようにバランスを崩した男の背中をもう一発蹴り飛ばすと、男は地面に倒れた。
「…よぉ。」
「…あ、挨拶にしては随分と乱暴な。」
声は掠れて弱々しいくせに、よくそんな威勢のある返事をするもんだ。
…手首に見えていた色。袖をまくると、思った通り、証拠と同じ入れ墨がしてあった。
「…来てもらおうか。」
「させるか…ぐぉっ!?いっ…ぃで…。」
こんな状況になってもまだ逃走を企んでいるらしいが、俺だってこいつを逃がすわけにはいかない。殺しはしないが、大人しくなってもらうため、そいつの右肩を踏んでやった。
「…折れても知らねぇよ。」
「…やめろ…やめろ、わかった、わかったから…。」

こうして、賞金首の確保はあっという間に終わった。
あとはこいつをどうにかして連れて行くのみだ。

…そう思った時。
「…アンタ、こないだの…。彼女連れてた兄ちゃんね。」
店主の女が声をかけてきた。
「おかげで助かったよ。」
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