それはまるで、金の髪、黒い翼…

——— 10月 夜8時頃

酒場"風の魚"。様々な客がテーブルの料理や酒を囲み、ユイレンがそれらを運ぶために、時折行き来している。
そんな、いつも通りの風景の片隅で、カウンターに座って話をしていた、ミミドリと、知り合いの男一人。
…彼女に向けて、カウンター越しに、ふとユイランが冗談交じりに、笑いながらこう言った。
「…そろそろ普通の、飲んでみる?」
「…え…?いいの…?」

…これまでの彼女は、普段殆ど酒を飲まなかった。
一般的な社会であれば、酒を飲むには法による年齢の規制というのがあるものだが…明確な統治というものがないこの世界"EDEN"では、それも所詮は良い子の戯言、バレなければ基本なんでも良し、そんなところなのである。
そもそもここでは、街に出れば、いかにもまだ少年と形容できる歳でありながら酒を好んで飲んでいるような連中が…表通りか裏通りかを問わず多くいる。危険な薬物もある中、彼らが愛飲するのが酒であれば、まだ幾分かマシな方だった。

それに、仮に彼女が一般社会で言うような歳には至らなかったとしても、もう十分そのくらいの歳には近く、あとの問題は、身体や内臓が正常に発達しているか、酒がそこそこ飲めるほどの分解能力が育っているか…そこに限られてくる。
実際、酒を飲むことが可能かどうか、検証という形での、彼女の初めて酒を飲む儀礼は、既にかなり前に、双子の手によって行われている…はずだった。
それでも彼女が酒を飲んでいなかったのは、そもそも酒を飲む習慣が彼女にはなく、好んで飲むようなこともめったにしない、というところから来るものである。
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