罪の復讐、復讐の罪

「…今どんだけやばい状況なのか、わかってねぇみたいだな…。」
痺れを切らした先頭の一人が、ベッドの上に座っていた彼女の後ろ首を両手で掴み、倒して押さえ込む。
「相当世間知らずのお嬢様だって聞いてるぜ。」
彼女は少し慌て…反射的な抵抗の兆しを見せたが、僅かな抵抗は無慈悲に力で捻じ伏せられてしまった。
手を離された途端、鞭で打たれるのももうすぐだと覚悟を決め、頭を抱える。
「…さぞ可愛がられて来たんだろうけどなぁ。もう終わりだよ。」

…突然、窓の外で、銃声が響く。

建物の外、中央の棟のベランダから別な男が銃を撃つ。その銃口の先には、左の棟のベランダを走る、クールの姿があった。
銃を撃っていた男のもとに、彼はややデタラメだがナイフを飛ばす。
何か光りながら飛んできたものを避けた男は慌てて視線を戻したが、そのベランダには彼の姿は無く、代わりに、視界の端に影が映った。
既に男がいるベランダの柵に手をかけていた彼は、柵を越えて男のもとへ走った…。


「…もう奴のお出ましかよ!」
部屋の男達が舌打ちをしてベランダに出ようとしたところで、やや下の方から、かなり近い位置だとわかる物音が響く。
…おそらくベランダの柵の発する音。靴の擦れる音。何度かのやや強い打撃のような音と、漏れる男の叫び声…。
それらが短い間のうちに錯綜し、その場にいた皆が状況を悟った次の瞬間には、すぐ下の壁でまた物音が聞こえる。

中央の棟と右の棟の隙間、両のベランダと建物の壁を利用して登ってきたクールが、男達がいるのと同じ最上階の高さへと姿を現した。

中央のベランダの柵へ手をかけてそこへ移った彼に、先頭の男が銃を向ける。
「…よぉ。」
彼に向って声を発する男の表情は…引きつりつつもどこか歪んでいるようなものだった。
銃を構える男の後ろでは、もう一人が鞭を持って、更に三人目の男がミミドリを絞めるようにしながら連れて出てくる。
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