「…あいつのこと知ってんだろ…。吐けよ。」
男が放ったその言葉も、彼女はなんとなく想像していた…。わかってはいたが、自分が発するべき言葉が何なのかがわからないままだった。
「…何か知ってんじゃねぇのか。隠れ場所の一つぐらい…。」
男達がクールの弱みを握ろうとしているのは明らかだが…彼女は長い事彼と付き合っていながら、そのような事情を何も聞かされていないということを確信する。
そして、何を答えるのが正解なのかも、答えられるような中身があるのかどうかもわからず、彼女はただ首を振った。

「…教えられてねぇんだか答えねぇんだか知らねぇが…。」

三人の男のうち、先頭の男が後ろのもう一人に目配せをすると、彼がそっと…窓のそばにある棚から何かを取り出す。それを彼女は横目に見るだけで、すぐに目を反らした。
「…黙ってりゃなんとかなると思ったら大間違いなんだよ。」
うっすらと表情の見える暗闇で、近くにいた先頭の男がそう言いながら嗤っている。
今、彼女自身にできることは何もない。あるとすれば、後先考えず暴れることくらいだが、力不足な人間がそんな無謀な選択を取ったところで、結果的に落ち着く状況など、さして変わらないのだろう。
「…どうする？」
「…知ってること吐いてもらうのが先だ。」
そうかと言って、特に何か言えることがあるというわけでもない。

…たとえ言えることがあったとしても。
クール、結蓮、結蘭、あの三人に影響が及ぶようなことはとても言えそうにない。それでは裏切ったと言えるようなものだから…。

ただ、相手はそう待ってくれるものではない。
「…じゃあ聞こう…。あんたがあのバーにいたのはなんでさ。」
後ろの方から近くに来たもう一人が、先ほど手に持ったものを、少々わざとらしく、広げながら彼女に見せた。
「…言わねぇと、コイツで痛い目見てもらうことになるぜ。」
しかし、おそらく鞭であろうそれを見せられたところで、最良の選択が何かを探す彼女がすることは変わらず…。
「……。」
「……さっさと答えろよ…。言わなきゃアンタも助かんねぇのよ。簡単だろ。」
苛立ったような、煽るような、そんな調子で言われたとしても…恐怖で埋まった人間の思考では、これ以外の選択を取ることはできない。