12月

この時期、世の中、特に表社会はクリスマスだなんだと騒がしい。ただ年末だからとか、クリスマスだからとか、そういうので忙しいってだけで、実際はただ同じ一ヶ月が過ぎて年が変わる、それだけだ。
そんなイベントなんて今まで関係無かった俺には、縁遠い話だった。

それでも、どうしたって歩いてる途中で、光る飾りがふと目に入る。
……こういうの好きだよな……。
今はそう縁遠くもないか。

ケーキ三切れの箱が入った袋を下げて、恋人のところに向かった。


「はい、これ。」
「…え?何これ…ケーキ?」
「そう。」
会って早々箱が入った袋渡したら、不思議そうな顔で。
「冷蔵庫に入れてきな。」
数分後、また部屋に戻ってきた手には、一切れが乗った皿がある。
「…食べてもいい?」
「いいけど…。」
「…食べる?」
…別に食べるつもりはなかったんだけどな。
「じゃあ半分。」
言いながら、いいことを思いついた。
「どれ、俺が食べさせてやろう。」

横に座らせて皿を受け取ってから、恥ずかしそうな顔を眺めて笑った。
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