5月 たかいたかい。

あのとき左隣でほぼ何も言わずに聞いていたクールだけど、実際は少し心配していたみたいだった。

翌日になって、外を歩いていたとき、さらっと。
「…昨日、あのおっさんに、あんなこと言ってよかったのか?」
興味なさそうに見えて実は聞いてるだろうなぁ…くらいには思ってたけど。改めて聞かれると緊張するよ。
「…いいんじゃない?もう事実なんだし多少はしょうがないと思ってるよ。」
「いや、暗いとかそういう問題じゃなくてよ…。」
もしかして、と思ったところで、
「…あんまり信用すんなよって話。」
だいたい予想した辺りのことを、ため息交じりで言われちゃったんだ。
「…うん、まぁ…そうだね。ごめん。」

あの時おじさんが、ちょっとびっくりしたようで…あ、なるほど、みたいな顔してたから。さすがにそういう人ではないと思うんだけどな。

…って。頭の中で思ってた時。
「…子供の頃はどういう子だったの。」
不意に横から…またいつもみたいな、答えるのに恥ずかしくなるような質問を、ふっと笑って飛ばされた。

「……。」
そんなこと聞かれたら、歩きながら考え込んじゃうよ。

「…その、"前のお父さん"はどういう奴だった?」
「え……うん……背、高い……。」
「うん、それは前聞いた。」
うまく答えが出てこない。
「…何かされたりとかしなかったの?って。」
笑って聞かれると…余計に答えづらい。いつもそう。

それに。今。聞くときの調子が…なんというか、あのひどく落ち着いた感じとは違う…昨日話してた他の二人がふざけてるときの調子をちょっと真似てる感じがした。
「…されたこと…。」
昨日の延長って意味合いなのか、それとも…?
頭の中をぐるぐる空回りさせながら考えてた。
でも。

「…俺にも子供時代はあったけど、あんまりはっきり思い出せるもんじゃないからさ。」
「…。」
「どうせ、言ってもつまんないし。」

それを聞いたとき、そうか、って。
自分はまだ…。ちゃんと親から愛されて育った時間があったけど。隣のクールはそうじゃないのかもしれないし、早いうちから親がいなかったのかもしれない。
…というか、きっと。このエデンにはそういう人が沢山いると思うのだ…。
私の知ってる普通とは違うから…。

背が高いお父さんにしてもらっていたことと言えば…。
「………高い高い。」
…それが、いつでも真っ先に思い浮かぶ。

でも、それはそれとして。言うのにはもちろん、ひどく緊張するから。やっとの思いで返したんだ。
「…こう、持ち上げるやつか。」
「…うん。」

ちょっと真剣な空気になったなと思ったんだけどね。

その会話をしてるうちに、部屋に繋がる外階段の前に着いたとき。両腕を差し出されたからさ。何かなと思って腕を上げて抱きつこうとしたら。
…さっき会話した通りそのまま。持ち上げられたので。
「…よっ!」
「わぁ…!」
びっくりして声が出た。当然、笑われるよね。
「…はい。これでいい?」
そう言われながら降ろされるんだけど。

…やっぱりいつもの展開だったじゃん…。
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