4月 負け確、カクカク、隠れ鬼
「…一分、経ったよ。」
「…ん。行ってくる。」
どうせすぐ捕まんだろうよ。
だいたいなんでこの兄妹は。わざわざ俺に鬼をやらせようと思ったのか…。いや、むしろあいつに鬼をやらせたらいつまでも終わらないか。だとしたら、今回なんで俺に鬼をやらせておいてタイムリミットを設けるのか。そんなの、制限時間なんてなくても…。
そんなことを考えながら、ゆっくり歩いて回り始める。
まず見える、スケた球体…グローブジャングル。あいつみたいなありきたりな奴からしたら、明らかに適さない場所だと思うだろうから、そこに隠れる可能性は極めて薄い。探るにしても最後でいい。
並木の陰も横目で見ながら、ただゆっくりゆっくり、歩いていくだけだ。
ブランコと、その周囲の植え込み。
さすがに呑気にブランコで遊んでるなんてことは…ないな。植え込みの陰、反対側。いない。
そうやって探していると、いつかあいつがいなくなった時のことを、一瞬思い出しかけた。
だがあの時と違うのは。逃げる場所に制約があること。あくまで遊びの内だということ…。
…秘密にしてること…。まさか俺が見つけられないなんてことはないはずだから。考えなくてもいいだろう…。
所々ある植え込みと木の陰、その辺のコンクリの段の上にある植え込みと、座れるようになっているそのヘリの下側。いない。
簡単そうな奴だと舐め腐っていると、意外と見つからない。そういう奴だ。…いなくなったときもそうだった。
探して歩いた先に、まぁ、ずいぶんとデカいアスレチックがあった。
────────────────
しばらくここで。高い位置から見下ろそう。下手に動くのは控えよう…。
そう思って選んだのは。アスレチックを上まで登った、グルグル巻きの滑り台…の、一歩手前。そこで、まるで銃を構えた軍隊みたいに、半球ガラスの前で伏せて、下を見てる。なんか、サバゲ―でもしてるみたいだな。こういうのもたまには…。
今、どのぐらい経ったんだろ?三時になったら時計の音が鳴るってユイレンたちが言ってたけど。
…ちょっとまった…。あれはもしかして…。
焦って探してるようにも見えない、あの不敵な雰囲気でこの公園を歩く…不良じゃなくて、クールがいる。もうアスレチックの方に来てる。速い。ってか他のところ探したんか?もしかして全部読まれてるんか?そりゃ頭脳派だもんな?いや頭脳派っていう言葉で片付けられるもんではなく…絶対常人越えてるよな?だって…。
そこまで考えかけて、やばい、と思った。
…絶対、このアスレチックも、軽々ショートカットして登ってくるタイプだ。つまり、実質もう既に逃げ場がないようなもんだ…。
あのクールなんだから。裏社会できっと散々…。
…と、そんな負け確な私にも、一応秘策はある。
「…せっま…。」
滑らない滑り台、とはよく言ったもんで。
そう。このグルグル巻きの滑り台の中に隠れて、いざとなったらその滑り台を滑って下に降りればいい。その時が来るまで、ここに隠れて時間を稼ごう…。
その「秘策」を頭の中で考えたとき、ようやく、勝ち目のないと思っていた私にも、ワンチャンあるような。そんな気がしたんだよね。これは行ける!って。
…そう、思ってた。でも。でも…。
…クール流に言うなら甘かったというべきだね。
滑り台の中に体を入れていつでも滑れるようにスタンバって、顔だけをその半球ガラスの前に持ってきてたんだけど。
どうやら、スタンバってる間に見失った。
やばい。どこ行った?
ひょっとしてもう登り始めてる…?
慌てた次の瞬間。あ!って思った。
…やっぱり、超が付くほどの身体能力持ちな鬼は、予想通り、もう目の前…。
内側にある筒やはしごというルールを思いっきり無視して、外側から登ってきていた…。
「…やっ…べぇ…」
思わず声が漏れる。
「…いたな!」
「うぉぉっと!」
クールがこの滑り台の前にある場所に降りてくる寸前、急いで滑り台の中に潜る。
…さすがは滑らない滑り台だ。おっ…そい。
あれだけ「秘策」とか考えてたのに…。
そうして、その巻き滑り台を焦って出て、さー走り出そう、と思った自分の目の前には。
アスレチックの外側をゆうゆうと伝って降りて、目の前にさっと飛び降りてくるクールがいた。
「いやっ、まっ…た!」
叫びながら踵を返して走り出すんだが…。
…私は。足が。遅い。
これじゃ、滑らない滑り台と一緒だ。
何のためにあの巻き滑り台はある!なんのためにこの逃げ足はある…!
そんなことを考えて数秒。
…で。冒頭に戻る…。
「…ん。行ってくる。」
どうせすぐ捕まんだろうよ。
だいたいなんでこの兄妹は。わざわざ俺に鬼をやらせようと思ったのか…。いや、むしろあいつに鬼をやらせたらいつまでも終わらないか。だとしたら、今回なんで俺に鬼をやらせておいてタイムリミットを設けるのか。そんなの、制限時間なんてなくても…。
そんなことを考えながら、ゆっくり歩いて回り始める。
まず見える、スケた球体…グローブジャングル。あいつみたいなありきたりな奴からしたら、明らかに適さない場所だと思うだろうから、そこに隠れる可能性は極めて薄い。探るにしても最後でいい。
並木の陰も横目で見ながら、ただゆっくりゆっくり、歩いていくだけだ。
ブランコと、その周囲の植え込み。
さすがに呑気にブランコで遊んでるなんてことは…ないな。植え込みの陰、反対側。いない。
そうやって探していると、いつかあいつがいなくなった時のことを、一瞬思い出しかけた。
だがあの時と違うのは。逃げる場所に制約があること。あくまで遊びの内だということ…。
…秘密にしてること…。まさか俺が見つけられないなんてことはないはずだから。考えなくてもいいだろう…。
所々ある植え込みと木の陰、その辺のコンクリの段の上にある植え込みと、座れるようになっているそのヘリの下側。いない。
簡単そうな奴だと舐め腐っていると、意外と見つからない。そういう奴だ。…いなくなったときもそうだった。
探して歩いた先に、まぁ、ずいぶんとデカいアスレチックがあった。
────────────────
しばらくここで。高い位置から見下ろそう。下手に動くのは控えよう…。
そう思って選んだのは。アスレチックを上まで登った、グルグル巻きの滑り台…の、一歩手前。そこで、まるで銃を構えた軍隊みたいに、半球ガラスの前で伏せて、下を見てる。なんか、サバゲ―でもしてるみたいだな。こういうのもたまには…。
今、どのぐらい経ったんだろ?三時になったら時計の音が鳴るってユイレンたちが言ってたけど。
…ちょっとまった…。あれはもしかして…。
焦って探してるようにも見えない、あの不敵な雰囲気でこの公園を歩く…不良じゃなくて、クールがいる。もうアスレチックの方に来てる。速い。ってか他のところ探したんか?もしかして全部読まれてるんか?そりゃ頭脳派だもんな?いや頭脳派っていう言葉で片付けられるもんではなく…絶対常人越えてるよな?だって…。
そこまで考えかけて、やばい、と思った。
…絶対、このアスレチックも、軽々ショートカットして登ってくるタイプだ。つまり、実質もう既に逃げ場がないようなもんだ…。
あのクールなんだから。裏社会できっと散々…。
…と、そんな負け確な私にも、一応秘策はある。
「…せっま…。」
滑らない滑り台、とはよく言ったもんで。
そう。このグルグル巻きの滑り台の中に隠れて、いざとなったらその滑り台を滑って下に降りればいい。その時が来るまで、ここに隠れて時間を稼ごう…。
その「秘策」を頭の中で考えたとき、ようやく、勝ち目のないと思っていた私にも、ワンチャンあるような。そんな気がしたんだよね。これは行ける!って。
…そう、思ってた。でも。でも…。
…クール流に言うなら甘かったというべきだね。
滑り台の中に体を入れていつでも滑れるようにスタンバって、顔だけをその半球ガラスの前に持ってきてたんだけど。
どうやら、スタンバってる間に見失った。
やばい。どこ行った?
ひょっとしてもう登り始めてる…?
慌てた次の瞬間。あ!って思った。
…やっぱり、超が付くほどの身体能力持ちな鬼は、予想通り、もう目の前…。
内側にある筒やはしごというルールを思いっきり無視して、外側から登ってきていた…。
「…やっ…べぇ…」
思わず声が漏れる。
「…いたな!」
「うぉぉっと!」
クールがこの滑り台の前にある場所に降りてくる寸前、急いで滑り台の中に潜る。
…さすがは滑らない滑り台だ。おっ…そい。
あれだけ「秘策」とか考えてたのに…。
そうして、その巻き滑り台を焦って出て、さー走り出そう、と思った自分の目の前には。
アスレチックの外側をゆうゆうと伝って降りて、目の前にさっと飛び降りてくるクールがいた。
「いやっ、まっ…た!」
叫びながら踵を返して走り出すんだが…。
…私は。足が。遅い。
これじゃ、滑らない滑り台と一緒だ。
何のためにあの巻き滑り台はある!なんのためにこの逃げ足はある…!
そんなことを考えて数秒。
…で。冒頭に戻る…。
