9月 Protect or Aggress

「…手貸して。」
暇を持て余して、奴の部屋でベッドに座っていると、横から、そう言って俺の両手を握る…。
「……何だよ。」

どうやら押し合いを始めるらしい。握った手と腕にぐっと力を込めてきたので、俺も自然と、それに対抗して、少し力を入れた。
急に始めんなと突っ込む代わりに、いきなり押されて崩れた態勢を、押し返して整える。

いつからだったのか。特に二人で横になってるときに多い。たまにちょっかいをかけてくるようになった。お互い一緒にいるのにだいぶ慣れてからなことは確かだったが。
初めは呆れてたと思う。それがいつの間に…。

下向いて力入れてるから、軽く笑って、適当にガンバレガンバレと言ってやった。どうせすぐやめるだろうくらいの感覚…なのは、さすがに伝わってるだろうと思ってた。
「…ふーっ!」
「おぉ?」
それなのに、本気出して来やがって。確かにいきなり力かけられてビビったけど。
…本気でやり合って、アンタが勝てるわけねぇだろ。っつうか、知ってるだろ。

「…?…ヤバい…。」
案の定。本気で力を入れ返した俺に押し負けてどんどん後ろに…。
下向いて必死に力入れながら面白そうにくすくす笑ってるけど。もう腕が震えてる。
それに、明らかにこいつの手が小さい。
自分で自分の手しか見てない時は錯覚して忘れかけてたが、あるときこいつに手が大きい方だと指摘されてから、通りでこいつは不器用だと…。
ただでさえ手に差が出るのは当然だってのに、これじゃ押し負けて当たり前だろう。

"これ"をどうしようか…。
奴がだんだん押し負けていくのを見て、静かに笑ってる自分がいた。昔は縁遠かったヌルい遊びをしてるのに、自然と面白がってる。

…普通に押し切って倒すのも悪くないが、それじゃ面白くないからな…。

腕の力を一瞬だけ抜いて。
「うわぁ!?」
情けない声と一緒に…力のやり場をなくして倒れ込んでくるのを、すぐ放した両腕で捕まえる。
「バカだなぁ。」
自然に倒れて来たもんだから、笑っちまったじゃねぇかよ…。そんなこいつときたら。急に捕まって腕で締められて、すっかり固まってるし。
そのまま、自分と一緒に横に倒して寝かせる。

「…本気でやったな?」
弱点バラしたのも自分なのにな。
当の本人は、いつも通り、また目を反らす。
「…あんまり考えてなかった…。」
…怒ってると思ってるのか。確かに怒ってると言や怒ってるけど。どっちかというともやっとした…笑えるけど、憎くて…。何だ?

もう何でもいいかと思った俺は…。こいつの顔に軽いキスを何回もする。都合よく目をしっかり瞑ったこいつを、いつもの倍きつく抱きしめた。
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