6月 Promised happiness

「私達も兄妹なんだから、あのぐらい仲良くないとね。」
少し遠くから二人を見たユイレンがそう言う。
ユイランの頭の中では、二人への羨みと、以前はもっと嫌いだったはずの兄への反応に迷う気持ちが、一緒になって渦巻いた。
「…まったくもう…。」

…四葉を渡された後。クールははさっきまでの話を頭に回し、思い立った。
「…ん?」
照れくささの抜けない彼女の目の前に差し伸べられた両腕。彼がしたいことがなんとなくわかって、またも照れくさい気持ちがぐっと込み上げてくる。
そして、なぜ急にそんなことをするのか。彼女にはわからなかったので、きょとんとしていた。

「…え?」
「いいから。ほら。」
当の彼はというと。そう言って伸ばした腕を少し振って見せ、恥ずかしさと疑問に固まっている彼女を見てふっと笑っている。
「二人とも。行くよ~。」
遠くから、ユイランのこちらを呼ぶ声が聞こえる。
彼女をさらに困惑させたのは、早く行かなければという気持ち。

…口を結びながら両腕を彼の首もとに上げた彼女を、彼がそのまま抱き上げた。
「…なんで…?」
「なんでって…こうやって歩きたくなったんだよ。」
ゆっくり歩きながら、落ち着いた調子でそう返す彼とは対照的に、彼女は、ただただ照れくさくて、抱かれて掴まっている腕に顔を埋める。

彼女を抱いてこちらに歩いて来る彼の様子を見て、自然と口元が緩むユイレンと、小さなため息をついてまた少し呆れたような顔をするユイラン。
待っている双子がどんな顔をしているのか、見たいような見たくないような気持ちで、顔を埋めたまま上げないでいた彼女だったが、
「…帰ろっか。」
「まったく、いいねぇ、そうやってくっついてるんだから。」
その双子の声を聴きながら、歩く彼に抱きついているうちに、だんだんと、心地よくなって身を預けた。


────この日常が…できるだけ長く、続きますように。できるだけ長くでいいから、一緒にいて…一緒に生きていられますように…。
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