Side Mimidori

今日も、結蓮に、歩いて数分のところにある市場に連れてきてもらった。
最初、部屋にこもってると退屈でしょ?って言ってくれて、その時から時々ついて行く流れになったんだけど、はじめの頃は、もし変な人に遭ったら私がいたら余計大変かなって思ってた。
でも、私がいるときは私がちょっと荷物持ちできるから、それが助かってるみたい。

「あら、今日も一緒なの?」
「そうなのよ。」
「お手伝いして偉いねぇ。」
「いやいや、そんなことないですよ。」
少なくとも私がついて行くときは絶対二人で寄るパン屋さん。そこのおばさんが気さくな人で。
「今日はどれがいい?」
「好きなの一個買っていいよ。」
結蓮にそう言われて、悩んでから、メロンパンを買った。
「…うーん。じゃあこれ。」

それがまさか、あんなことになるとは…。


そのちょっと後だった。
「…ちょっと急いで行ってくるから、待ってて。」
「うん。」

市場を出る前に、結蓮が買い忘れたものを買いに戻るっていうから、その間ほんのちょっと待ち時間ができた。
一人になるのは不安だったけど、今までここで変な人に遭ったことはない分、あんまりそういう実感が湧くわけでもなかったから、ただ大人しくしてるだけでいいんだろうなって思ってたんだけど…。

ちょうどその一本道の市場の、途中にある区切りの横道みたいなところだったから、アーケードの建物の周りがちょっと見えた。
その市場の片側の建物の、配管が張り巡らされた裏の道を、覗くつもりで見てみたら…。
「…!」
そこにいた小さい坊主の男の子と目が合った。
ただ目が合っただけだよね、って思いたかったけど、そうもいかなかったみたいで。

…無言でナイフを、こっちにスッて向けてきた…。
切られるか刺されるか…そう思うと怖い。
でも、この荷物を置いて逃げるわけにもいかないし、どうしたらいいんだろうって。

「ちょ、ちょっと…!」
「…!!」」
そこで咄嗟に…ちょっと待って、って、手で…伝わるかどうかもわかんないけどジェスチャーして、さっきのメロンパンを取って差し出した。
「………。」
男の子はなんにも言わなかったけど、ちょっとハッとしてた。
そのあとすぐ、私が出したメロンパンを取って、その狭い路地を急いで行っちゃった…。

……とにかく、助かったんだなって思って、ホッとした。
メロンパンのことは、ちょっと残念だけど、仕方ないよね……。
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