Side Cool
「…てめぇ…誰だ…ぐっ…!?」
起き上がろうとした男の腹部を左足で踏んで押さえつけて、そのまま、横の部屋にいるガキに向かって叫んだ。
「…おい!」
「…!?」
「…ここから早く出ろ!」
「……え…!?」
言われたことを一瞬では理解できないところからしても、なんとなくわかる。
きっとこういう世界には馴染んでないんだろう…。
「……でも……。」
「いいから早く!!」
「…!!」
この状況で。こんな何も知らない奴に。詳しいことなんて話せるわけはない。
…喋ったら余計ビビらせるだけなのもわかってるからだ。
押さえつけてる男が…会話から察するに、あのガキの父親が、唸りながら体を起こそうと必死になってる。
「…………!」
それを押さえつけてる俺の横を、ビビりながらゆっくり、あのガキが通り過ぎようとする。
「……もう二度とここには戻るな。」
「っ…てめぇ何しやがる…ぐっ!」
出ていこうとしたガキに声をかけた途端に、男がまた起き上がろうと必死になったところで、踵に力を込めて、上の方の首元と肩のあたりを踏んでやると、痛みに体を動かしながらまた黙り込んだ。
「…………。」
「…さっさと出てけって言ったろ。」
俺がそう言うと、またビビりながらゆっくりゆっくり歩いて、扉を静かに開けて、出ていった…。
扉が閉まって数秒後には、階段を走っていく音がする。
あいつが走って降りて行った音だろう。
あとはこの押さえつけてる父親を…。
「……クッソ……てめ……。」
顔を歪めて、半分掠れた声で必死に威嚇してくる。
さっき肩を踏んだのは骨の上だ。あれにはかなりの力が入ってる。下手すりゃ亀裂でも入っててもおかしくない。そりゃこうもなるか…。
「…あんたはずっとあのガキに金取りに行かせて遊んでたのか。」
「……わりぃかよ。」
「…自分で外に行けるんなら自分でやりゃいいだろ。」
押さえたまま屈みこんで、こいつが倒れたときに落としたナイフを、手を伸ばして拾った。
……あのお人好しには負けたな。
