「……こっち向けよ。」
「……？」
…確かに…ずっと顔は合わせないで喋ってたけど、なんでだろう…。今までも緊張はしてたけど、薄々そっちを見たら、急に緊張の度が増した…。
その状態のまま、こっち見てるな～って思ってたら、その顔が近くに来てた。

顔が近い…って、目を瞑ったら、唇が触れたのがわかった。
……それが、一番最初に、ちゃんとした、キスだったんだ……。

私はその間…というか、終わった後も、もう終始、頭の中がパンク寸前というか…ずっとそんな状態だったよ…。
離されて、目は何とか開けたけど、さっきよりももっと直視できなかったし…。今ものすごい目が泳いでるんだろうな～って思ったけど、だからと言ってちゃんとそっちを見られるわけでもなく…。頭が…緊張なのか、ツーンってする。

「…心配して損した。」
…クールには静かに笑われてた。
だんだん私も…たぶん照れ笑いなんだと思う、笑いが抑えられなくなってきた…。
「…怖がるかと思ってたけど。」

…自分で笑ってるのはわかるんだけど…今の自分はどういう顔してるんだろうな…って、薄暗いけど、クールには、私がどういう顔してるかわかってるのかな…って思って、すごく恥ずかしかった…。



―――それからかなり経っても…。

「…全然慣れねぇよな。」
そう、今また同じような状況になってる。
…いや、同じじゃなくて…正しくは、私だけが、ほとんど変わっていない…。
また笑われた。
「いつまで経ってもそのまんまだな。」

…あの時とは違って、クールは短い期間でも帰ってきてくれるようになったし。その分会う回数だって増えたけどさ…。
私はもうずっとこれに慣れることはないんだろうな…って思うよ。