その気持ちのままに、友人から、この繁華街もよく通ったことがあるという例の彼女の、見た目やよくいることの多い場所を聞き出して、探していたところ…発見したその情報通りの人物は、見た目も擦れ具合も、やはり自分と比べれば格下…そう思えてしまったのだ。
おまけに、こちらが後先考えずに問い詰め、どんな言葉が返って来るか、どんな報復が来るかと、多少怯えたところで、何も言い返してきやしない。
…いや、きっと何も言い返せないのだ…そう思った瞬間、ナギの心には、苛立ちと優越感が両立した。複雑な心境で心がぐちゃぐちゃになってしまったナギは、その苛立ちと優越感に任せて、彼女を責め立てて、終いには足を一振り、蹴った…。

それから数日が経っても、ナギ自身は、相変わらず、例の彼女への怒りと苛立ちを持ち続けている。しかし、自分がしたことで、様々なことに対する焦燥感が出てきつつもあった。
ナギの心は、いつまでもぐちゃぐちゃになったままで、たとえ例の彼女…ミミドリを責めたところで、スッキリするはずがなかったのだ。


そしてその夜。ナギの焦燥感の要因である予感の一つが、的中してしまうこととなった。

「…ごめん、ちょっと、外行く。」
「…何？ナギちゃん、また煙草かぁ？」
「やだ、吸わないから！ちょっと休むだけ！」
あのことを何度も思い返して気分が悪くなり、さすがに精神を落ち着ける時間を欲したナギは、断りを入れ、ヘラヘラと笑いながらも、扉を出てゆっくりと階段を下る。