悪魔って何だろうね?

「……クールってそんなに悪魔ってわけでもないよね。」
「…急になんだよ。」
「…なんとなく。」
寝る時にもなって唐突に。布団に入って何を言い出すのかと思えば。
「…ホントにそう思ってんのかよ。」
「…うん。」
「…そりゃあ…アンタの前ではそうかも知れないけど。」
こんなこと呑気に言ってる人間が、いざ一人の時の俺を見たらどう思うのか。よく知らないからそんなこと言ってられるんだろうけど。
「…じゃあ悪魔じゃないフリしてたらどうすんだよ。」
「…え?…いいよ。」
「…なんだそれ。」
ふざけてるみたいに笑いながら言うことじゃねぇだろうよ…。
「……冗談なのか本気なのかよくわかんねぇ返事だな。」
「……。」
「…よくそんな簡単に信用できるもんだよ。」

…果たしてこれが、悪魔じゃないフリになるのか、確かに微妙ではある。これが本心だからフリには入らないような。

いつから俺が、裏で有名になったのか。いつから、やれ一匹狼だの、やれ裏の実力者だの、周りで言われるようになったのか。そんなの気にしてもいなかった。というか気にする必要も、余裕もなかった。気が付いたらそういう存在になってた気がする。
初めはいろんな人間の人生を狂わせた。それで悪魔だ何だって。ただある程度、陰での生活が板についてから、たまに同じような世界にいる人間を潰すことの方が多くなった。
それだけ長い間、そうやって生活してきて、本当に気付いたら、抜き出た存在になってた。
…俺にとってはそれだけの話だと思ってた。昔は。
今になってよくよく考えてみれば。確かに。
最初のうちは、いろんな弱い人間から、手あたり次第生きる術を奪ってたようなもんだったし、当然そういう人間からは、悪魔だとよく言われたもんだったが、俺もこの世界も、年が経つごとに変わって、そんなことを弱い人間から言われるようなことはなくなった…というか、俺はもう、並大抵の奴が口出しできるような人間じゃなくなったんだろう。

…それなのにこいつときたら。
「…一緒にいるのは嫌?」
「…そういうわけじゃねぇけど…。」
変な奴だな…。
…言おうとして、やめた。
元はと言えば、狂ってるのはこっちの世界の方なんだって。こいつといるとそれが思い知らされてしょうがない。
「……俺はいいけど、そうやって他の男について行くなよ。」
「うん。」
なんとか別な言葉を探して、結局いつもと同じ流れに行き着く。
「……違うじゃん。」
「…何が?」
「……悪魔じゃないじゃん。」
…まったく。こっちが苦し紛れに返事してるの知らねぇのかよ。いい加減気づけよ。それとも分かってて言ってんのかよ…。
「だから、好きだからそうしてやってんだよ。」
「……!」
口塞いでやったら、黙~って、すっかりいつものマヌケになってやんの。
「…アンタはもう寝なさいよ。」
2/2ページ
スキ