架空とは違うもの

「…どれ、俺もそのうち特殊義手の手術でもするかね…。」
少しわざとらしく冗談半分に、けれどどこか遠くを見据えたような様子で、伸びながら、クールが言った。
「…えぇ…?」
横に座っているミミドリが、ゲームのタイトル画面から目を移しながら声を上げる。
「えぇって。嫌なのかよ。」
「…う〜ん…。」
聞かれて、答えに悩んだのか、唸りながら少し考えて、やっと。
「……嫌ではないけど……そのまんまがいいな……。」
もそもそと、小さめに口を開いた。
「…そう…。無茶言うねぇ。」
「…なんで義手?」
「それは、あった方がいいからに決まってんだろ…。」
画面の中では、小さな人間の兵士のようなキャラが浮遊しながら自機に向かってレーザーを打つ、デモ映像が流れている。自機は容赦なく弾でそれを殲滅する。
「裏社会じゃそういう奴は増えるんだろうし。護身とかそのぐらいで、今から手術しといた方が特なのかなと思ってさ…。」
「……そっか…。」
ミミドリの、納得したような、それでもまだ少し唸るような、そういう顔で答えるのを見ながら、クールは続けた。
「…こっちはアンタ残して死ぬわけにいかねぇんだからな。」
「……。」
当の彼女は、突然言われたことに黙りこくっていた。
「…まぁ別に、今すぐやろうってわけじゃねぇけど…。そのうち未来でやることになるかもって話だよ。」
ため息混じりで続けたクールだったが、ミミドリがまた、しばらく考えたあとで、もそもそと。
「…でも…手術失敗したら、もしかしたら死んじゃうかもよ…?」
それを聞いて、クールはふっと笑って彼女を抱きしめた。
「ハイハイ、そうでしたね。」
……本当は、本心ではなくからかい半分で言っていたことだったのだが、彼女にそんな本気なことを言われては、もう話を辞めざるを得なかったのだろう。

画面ではまた小さなキャラが爆ぜていた。
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