最終章
彼にも言いたいことがあるようで…。
「…でも、アンタもなかなか頭が切れるんだな。」
「…ん?」
「あのとき電話で繋いでなかったら俺たちはくたばってたかも。」
「…あぁ…。」
…彼女は思い出して少し恥ずかしくなった。
「俺は連絡手段がなかったから…。」
「…でも説明に迷った…。」
「ああいうときは、もたもたすんなよ、時間無いんだから。」
彼もあの時のことを思い出しながら笑った。
「…いや、でも…いきなり電話したじゃん…。信じてくれなかったらどうしようと思って…。」
「…一緒に死んでもいいのかよ。」
「そういうわけじゃないけど…。う~ん…。」
しばし悩んだ後、答える。
「…でもどっちか一人で死ぬよりは…。一緒だったら別に死んでも…。」
「…まったく…ちゃんと帰ってきた後にそういうこと言う…。」
…だが彼は少し咎めた。
「今は安全だし帰ってきてるからそういうこと言えるんだろうけど…?あの時どういう気持ちだったか覚えてて言ってんの?」
「…。」
「俺みたいな人間はともかく、アンタは普通の人間なんだから。」
「…うん。」
「…あんなにピーピー泣いてたくせに。よく言えるね。」
あの時のことを笑いながら言われて、さすがに彼女も何も言えなくなった。
「アンタは怖がりなんだから、そういうことは軽く言うなよ。」
「…うん。」
お互いにまた少し静かになって、彼が「…もう寝るよ。」と声をかける。
二人は安心して眠った。
翌日の夕方。結蓮はミミドリの部屋に来て、あの時の話をしていた。
「あれね、びっくりしたよ。」
「なんですぐ言ってくれたの?」
「…うん、最初はね、詐欺かなとか、どういう話かなと思ってたんだけど、でもこの状況で二人の声が一緒に聞こえるってことは、絶対本人だろうなって思って。」
「…うん、確かに。」
「あんたは攫われて、彼は助けに行ってて、だから、その場からの電話ってことはよっぽど緊急かなって思ったの。」
結蓮はあの時、迷いもある中でかなり冷静な判断をしていたのである。
「…ありがとうね。」
「うん。いいのよ。ちゃんと帰ってきたんだから。」
