最終章


しばらくして。
ヘリの離陸に少し怖がったミミドリをため息交じりに「大丈夫だよ。」となだめて、クールは彼女の片腕を自分の胴に巻かせた。

「…何かわかったことは…。」
「…この建物がもうすぐ崩壊するってことぐらいだな…。あと、こいつがよくわかんない薬入れられてる。」
隊員たちがする質問にクールが答えた。
「…?薬?」
すぐに驚いた当の本人が聞き返す。
「アンタは感情をおかしくする薬を入れられてたんだ…。あの眼鏡のが入れたって言ってた。」
「…。」
「でも少量らしい。効果ももうだいぶ切れてるだろ。」
驚きと不安で固まる本人だったが、
「今日は、施設に入って検査にかけよう。そうすれば体に異常がないかわかるよ。」
…隊員の言葉で少し安心した。
そして、きっと閉じ込められているときに気分がおかしくなったのは、薬のせいだったんだと、ここで合点がいった…。


もう気を張る必要がなくなったことを自覚すると、同時に体の疲労も自覚させられてしまう。
あとの他の隊員たちが時々話している内容は、聞こえても、内容が頭に入ってこない…。

そのまま、ぼーっと…できることもなく、揺れもある中で若干の眠気を覚えていた彼女が見ていた窓の外。

ドン…どいうすごい音がして、数秒後、離れ始めた廃病院から舞う砂埃が、真っ暗な空をバックに、浮かび上がる。
その音で、はっと、また少し目が覚めた。
あれが、建物の崩壊する音なのだろうか…。そう思った直後、建物は音を立てながら、少しずつ、少しずつ…砂埃と煙の中に呑まれていく。
…すごく非現実的な景色を見ている気分だった。でも、これが、今見ている現実だ…。

一緒に居たタロウは無事なんだろうか。心配だったが、今はそれを確認するような余裕もない。
もう少し遅ければ、きっとあの崩壊に呑まれていたのかもしれない。そう思うと、彼女はとてもゾッとした。

しかし、そのことをグルグルと頭で回しながら、まだ緊張も不安もある中で、あの崩壊間際の場所から逃れた安心感で、今度こそ瞼が重くなる。
ただでさえ、こういうことに慣れていない彼女だが、薬を打たれて体の内側の消耗もあったことで、尚更疲労していた。


何もすることがないと、ただただ、眠気と格闘する一本道で、ふっと、意識が一瞬飛びかける。
…ここで意識を飛ばしてしまったら、自分だけがくたばっているようにも見えて、また周りに手間をかけるのかと考えてしまった。
ただ、そうは言っても、限界まで来ている眠気も、待ってくれるわけではない。

そうやって、また意識が飛びかけて、目を覚まして、格闘をして…という流れを繰り返していたところで、ぽんぽんと、横から肩を叩かれる感覚。
「…?」
…起きていなきゃと必死だったところに、後頭部を通して肩に腕を巻かれた。

そして、そのまま肩を寄せられて、そこに頭を預けた。
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