二章

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コントローラーを握っている訳でもなく、ただ部屋でぼーっとしていたミミドリの前に、
「…ちょっと提案。」
扉を開けて結蓮が入ってくる。
「もう少し慣れてきたらさ、今度、夜、下に降りておいでよ。」
それは、少し突然な提案でもあった。
「…え…?下って?バーってこと?」
「…うん、そう。ちょっとびっくりした?」
「いや、びっくりどころの話じゃ…。」
笑う彼女だが、彼女には、このままでいいのかという気があったのもまた事実だ。
「なんていうかさ、もうちょっと人前に出た方がいいと思わない?」
そうだ。本当にその通りなのだ。
だが彼女は単純に、それが得意ではなかった…。
「そうだけど…。」
「…いつでもいいから。降りたくなったら言って。そのまま降りてきてもいいから。待ってるよ?」


――――― ある夜


いくつもの棟がある建物、すぐそばを植え込みで隠されたA棟の壁…その植え込みと壁の間へ、壁を伝って降りる黒い影があった。
今回ばかりは…とグローブをしているその手で、窓に張られている何本かの細い鉄線を切るために、工具を握っていた。
大きな施設であるというのに。なぜこんな簡単なつくりにしてあるのか…。そんな疑問が浮かぶようだったが、迷っている暇はなく、すぐにその鉄線を全て切り終える。

…数日前。

「俺はあのカルロスについては本当に何も知らないよ…。」
「…聞いてくれ。」

軍の管理下にある施設の部屋にて…。
「君みたいな…荒れた場所に慣れたような奴じゃないと頼めない話がある。」
真剣な表情で訴えかける目の前のハリーに少し疑問と違和感を覚えながらも、彼…クールは話をしばし無言で聞いていた。

「奴が昔…関連の研究所にやらせてた生物実験の延長戦だ。」
生物実験と聞いて、かつて共にカルロスを打ち破った灰児のことが、頭をよぎる。
「その実験に携わって…閉鎖当時から姿をくらましてた奴ら…手がかりがほとんどないんだ…。もたもたしてる間に、死んだと思われてた指名手配犯が、実は遺伝子の同じ別人だったことがわかった…。本人が生きてるかどうかもわからないんだけどな…。」

彼には、また深刻な事件が起こりそうな予感がしていた。
…あいつに関わった奴も相当大変な脳を持っているわけだ…と思いながら。

「…つまり、クローンだ…。その当時から姿をくらましてた奴らが、今またどこかで動いてるってことだな…。」
「…それで、俺に調べて欲しいってことか。」
やはり真剣な表情で、「あぁ…頼む…。」と頷くハリーを見て、彼もふっと笑って「…面白いな。」と返し、付け加える。

「…終わったら、十分な報酬があること。それが条件だ。」
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