十一章


――――― 数分前。

「がふっ…!」
「…こんなもんか。」
「……。」
遠くの見張りに見つかって行く先に迷っていた灰児とタロウは、灰児の策略で、うまく死角になる場所で待ち伏せをして、こちらへ追いかけてきていた見張りに不意打ちを喰らわせていた。
…強めの蹴り入れられてダウンした見張りが、銃と替えの弾を落とす。
灰児はその銃と弾を奪って、武器にした。
「…た、頼む。オレたちのことは…見逃してくれ。そしたら、あんたのことは…。」
その間に、起き上がろうとする見張りの男に、タロウが交渉を持ちかけていた。
「…ぁ…ぁぁ…。もういい……。行け…。」
腹部を抑えて立てる様子のない男は、小さくそう答え、二人を見逃すと約束した。

「…い、行くんだろ…?ホールに…。」
「あぁ…でもちょっと待て…。」
灰児は、大きな会議室の横の廊下を歩きながら、何かもの言いたげにする。
「ここをこのまま歩いて行ったら、たぶんホールだろうよ…。でもな…。」
歩くスピードを落とし、右手にある階段と、前方、そして左に続く廊下の分かれ道の前で、二人は止まった。

「あ、ほら、この厚い壁がそうだ…。この壁の先はまた手ごわいんだろうよ。」
小声で表情を崩さずにそう言って見せる灰児だが、タロウは不安そうだ。
「何があるのか…わからないんだよな…。」
「あぁ…だから、手分けしねぇか…。そこにちょうど階段がある。」
「…っ!」
灰児の口から出てきた言葉に、タロウは驚いた。

「こっからは、二人一緒には動きにくい。もしボスでもいたら余計に厄介だからな。」
しかし、灰児の言うことは全くその通り…。この先に何があるかはっきりとわからないのも、二人の不安を煽る要因だ。

「お、オレは一階から行くのか…?」
「…うん、そうだな、そうしよう。俺はこいつを持ってっから、高い位置の方がいい。」
「で…でも…見張りがいるかも知れないな…。」
「…一階の見張りはこっからじゃ見えねぇな…気をつけろよ。危なくなったら引き返してきてもいい。」
「あぁ…。やってみるよ。」


こうして…二人は一階と二階で二手に分かれて、壁の向こうへと進むことになった。
そのほんの一分後のこと…。


結果的にそれが功を成し、灰児はホールのギャラリーにいた銃を構えた男たちを、ついさっき奪った銃で撃っていた。
そしてギャラリーから見下ろした相手…まさに黒マスクの彼が、因縁の相手だったというわけである。

「…親孝行もできないなんて…呆れる奴だ…。」
「ふん!親孝行もクソもあるか!」
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