十一章


――――― 廃病院、B棟ホール

「慌てんなよ…。っつうか先に手を出したのはそっちだって。」
黒マスクの彼は、目の前の侵入者に向けて、答えた。

「質問に答えろ。」
「…簡単に教えるわけないだろ。」
ついさっき危機一髪になったばかりだというのに、余裕を取り戻している彼は、ため息交じりでそう答える。
小さなナイフは彼の後ろの壁に刺さったままである。
ステージを降りて近づきながら、彼は言う。
「だから慌てんなって。いい話がある…。」
クールは、彼の態度に不自然さを感じるも、そんなことを長々と考える猶予はないとすぐに切り替えた。
こうなれば吐かせるしかない。吐かせたところで、それが本当の答えなのかどうかは怪しいところだが、無いよりはマシだ。

「俺たちのところに来ないっ……っ!」
…彼が言い終わらないうちに、距離を詰められている。上がってきた片足が彼の顎の端に当たり、背中から倒れた。
しかし倒れた痛みに耐えて、すぐに転がって起き上がると、お互いまた少しだけ距離が離れる。
大きなダメージとはいかなかったことで、また仕切り直しをかけようとしたクールの目に、窓の下、ホールの高い位置にあるギャラリーの人影が映った…。
こちらに銃を向けているのがわかると、銃声が鳴るより早く地面を蹴って、高く、遠くに、跳ぶ。
しかし、後ろの方に飛び退いた彼の目に、一瞬だけ見えた反対側のギャラリーにも、また人影が見える。

さすがに組織を相手にしている手前、一対一とはいかなくて当然か、と、思ったその時。
前方、近くに来ていた黒マスクの彼が、こちらに何かを向けているのに気が付く。

避けようと転がったところを、そこから放たれた何かに吞まれた。

「…くそっ!」
「残念だったな。これは銃じゃない。ネットガンだ。」
彼は声を上げて笑う。

「人の話も聞かないでよぉ…。ま、あんたはもともとそういうタチじゃないってのは知ってたけどね。」
話しながら、手に持ったネットガンをぐっと引いて、抜け出せないように網を締める。
「こっちの陣地に来いよ…って、せっかく話で解決させようと思ったのに…?でもどうせ聞いたって断られてるかな…。」
「…当たり前だ。俺が手を組むと思ってんのか…?ましてや貴様らと…?」
「……ふ~ん。」
…こう答えを返すクールに、彼は、内心驚いた…。態度が崩れる様子がなかったからだ。
「…まだどうしようか迷ってんだよねぇ…。このまま捕まえておくのもいいけどさ。叩き返されても嫌だし…。今だったら殺すのも苦じゃないからね。」
そう言って、彼は、もう片方の手でダガーを握る。クールが黙ったので、ようやく焦ったと思い、彼は次の手に悩み始めた…。

しかし、彼が決断を下す前に、鳴るはずのない銃声が、何発も響く。
「…がっ、うあぁぁ!」
銃声と叫び声に彼はひどく驚いて、ギャラリーを見上げ、息をのんだ。

「…よぉ~!あんたか!どうだ、残しといた戦闘狂に復讐される気分は!」
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