十章
一方。見張りをしていた者たちに見つかった、浪人とタロウたちは…。
「…命令?」
「閉じ込めとけって話だっただろ?」
…それはそうだが…少なくとも瞬時に武力行使に出ずこうやって話に応じている見張りの浪人たちも、たいがい抜けている。
黙るタロウと灰児の二人の前で、浪人は懸命に説得をしようと試みた。
「…なんでもいいだろ。ここを通る…。」
「どこに行くんだよ?」
「……B棟…。」
しばし迷ってそう答える浪人に後ろの二人もヒヤヒヤしているが、見張りの浪人たちは、やはりその二人には直接害を与えたくないようである…。
「お前…歯向かったら殺されるかもしれねぇぞ…。」
だがその集団のもとへ…更に別の見張りが、歯向かう三人の背後からやってきたことで、場はさらなる混乱にのまれる。
…さすがにその男は穏便には行かないらしく…三人に向けて、銃を構える。
二人をここまで連れてきた浪人がそれに気付いて、咄嗟に…庇うように二人の後ろに回った。そして、そのタロウと灰児の二人に向けて、叩きつけるように叫んでいる。
「あんたらは早く行け!」
その瞬間、銃声が鳴った…。
「…っ!」
「…お、お前…!」
…タロウがショックを受けるのも無理はない。
庇った浪人の胴には血が滲んでいる。だが、若干バランスを崩した浪人は、一度は背を丸めかけるものの…。
「…あんたらが行かなかったら、もう、望みは…。」
またゆっくりと体を起こす。
後ろの見張りの浪人たちは、その姿をみて、同じように協力する姿勢を示した。
浪人の言葉に走る決断をした二人の道を開け、銃を持った男に、撃たれた浪人と共に走って突撃をする…。
一般の人間のできることと言えば、これくらいだ。
あとは、あの二人が必ず行ってくれるだろうという望みを残して、撃たれた浪人は、叫んだ。
「ぅおぉぉぉ!」
本来ならあの浪人を守るはずだったが…逆に守られ、庇われて、誰もいない廊下を走る二人…。
見張りがいないことを確認して、息切れも激しい中、階段の途中の踊り場で、小声で話し合う。
「…これで…良かったのか…。」
「…俺たちが行かなきゃ、望みはねぇって…そう言ってたな…。」
自分たちが最初にいたのは一階、この階段は二階へと続いている。踊り場の壁には、"C 1/2"と書かれていた…。
つまり、ここがC棟であることを表しているのだろう。
…隣のはともかく、多少の負傷をしても動ける自分くらいは、必ず行かなければ…。そんな決意をもって、灰児は声をかけた。
「Bのホールだろ…?こっからは遠いが…。」
