十章

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ぼんやりと…静寂の中、コンクリートの天井を見つめるうちに、どうやら少し眠っていたようだ。
ミミドリは布団の中で再び目を覚ました。何かされたような形跡はないが、今はいつなのか、どれだけの時間が経ったのか、その一切がわからない。
また、ゆっくり顔だけを傾けて…天井から、時計もなければ外の景色を見られる窓もないこの部屋を見る。そこに見えるのは、低めのテーブルと長く黒いソファーだけ…。
なんとも簡易的なものだが、ぽつぽつと一定間隔に空けられたくぼみのあるコンクリート壁といい、このあまりにも物寂しいつくりといい…雰囲気からして、ここがもう普通の部屋ではないことがわかった。

奴らの目的は、おそらくは、クールを始末する事なんだろう。
だがクールはあの彼が敵であることを既に見抜いていた…。
彼女は最初にここの部屋で彼の顔を見たとき…意識が戻って間もない感覚ではっきりしなかったのかもしれないが…見覚えがあるというところまでしか、すぐには出てこなかった。
向かって左、片目が隠れがちになるほど伸びた前髪は、なんとなく彼の特徴ではあるのだが…。それでも、ここで見た彼の前髪は綺麗にまとまって、まっすぐに伸ばされていた。あの外で見た彼の髪は、もっと全体的に癖の強そうな髪をしていたように思う。
おまけにここで見た彼の口元は、黒マスクをしていて隠れている…。

つまりあれは演技だったということなんだろうか?
それにしても…楽しそうに話していたのに、あれが演技だったとは…到底思えない。
ただ、あの眼鏡が伊達だったのも、きっと印象をわかりにくくするため…。そういうことなんだろう。

…そんなことをただグルグルと考えながら、彼女は無気力に、ただぼーっと、天井のようで虚空を見つめていた。


しばらくして、あることに気が付く。
眠ってしまう前まで、疲れ切って動かないと思っていた体が、今であれば動かすことができる。胴は縛られているが、幸い脚は縛られておらず、足の自由はあった。
少し頑張れば、このベッドから降りられるかもしれない…。

布団の中で足を動かして、ベッドからおろし、そのまま上半身に力を入れた。だが上半身を起こすのはなかなかに大変である。
体を時々傾けて、左右の腕の力で体を上げ、なんとか上半身を起こす。そうしてベッドに座っている形になった。
布団は、起き上がる過程でずるずるとずれて、足の方の布団の端から、所々下に落ちている。

…座る体勢になってから我に返って、誰かがこの部屋に見回りにでも入ってきたらどうしようかと、ひどく身がすくんだ。
もうその時には命はないかもしれない。敵が何を考えているか、経験のない自分が読めるわけがないからだ…。

今の状況は、全てギャンブルのようなものだ。
敵の誰が、いつ、再びここへ来るともわからない。立ち上がったところで、この部屋から出られる確証もない。助けが来るのかどうかも…。
なんでも信用することを甘い考えだと言われていたはずだ…。動かなければ始まらないとはいえ、迂闊に動けば命を失う可能性だってあるこの状況が…全財産などという言葉が生温く聞こえるほどの、命を賭けたギャンブルだった。

それでも、今は、助けが来るのを信じて待つしかない。
…自分はできることだけをして、あとは"彼"に賭けよう…。

唯一、壁や天井とは違った素材をしている…深緑色の床から、ソファーのある方にまた目を移し、震えながら、ゆっくり立ち上がる。
音を立てないように、そっと…。

彼女が体にかかっている布団を無視して立ち上がると、するりとその部分も床に落ちていった。
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