九章
「…そんな…。俺…。」
「あいつらは、俺たちのことは殺したくねぇだろうから、多少は俺たちが縦になれば躊躇はするだろうよ。」
「……。」
「…あんたもそろそろ、この状況何とかしねぇと…。あいつらにこき使われてそのうち殺されんぞ。」
「…そんなこと…。」
「俺がそうだったんだよ。」
灰児の説得を見て、タロウも口を開く。
「オレも…。もうこれ以上、あいつらに好き勝手させるわけにいかない…。それに、オレの友達も、攫われた…。」
「…まさか、あの一緒にいたのが…?」
「そうだ…。あの子だ…。オレの友達だ。」
「……。」
逆らうことへの恐怖と、内側からの訴えに募る感情が、思考を詰まらせ、浪人は黙り込んだ。
だが、やがて沈黙の中に、蚊の鳴くような小さな声が。
「……わ…わかった…。鍵開けるよ。」
「…よし。」
浪人は、大きな音を立てないよう震える手でそっと刺した鍵を回し、病室の扉を開く。
その中から出てきた二人は、廊下に出て辺りを見渡すと、誰もない古い廃病院の廊下を静かに進み始めた。
「…どこに…。」
凄く小さな声で二人に問いかける浪人の顔には、まだ覇気はない。
「…それは今から考えるんだ。」
「…出口まで、だいぶ遠かった気がするな…。」
だがその二人の返事を聞いていた浪人は、何かを思い出し、とっさにタロウに話しかけた。
「そうだ…あの子、いただろう…あいつらに一緒に攫われてきた…。」
「…あの子は、どうなった?」
「それはわかんないけど…なにやらB棟のホールに行くとか言ってた…。何があるのかは知らねぇ。でもあの子がもしそこに連れてかれてるとしたら…。」
「…なんだって…。」
…歩きながら、緊張のような絶望のようなよくわからない感覚を味わっていた彼と、話を聞いていた灰児、そして浪人の三人へ、何者かが声をかける。
「…!お前は…。」
「なんでその二人を連れてる?」
「っ!」
それは、彼と同じようにここに出入りを許されていた…同じような浪人たち。
「これは命令なんだ…連れてかなきゃいけない…。」
…その嘘は、あまりに下手だった…。
...
