八章


「私、ついてきたの…。あの黒ちゃんに…。」
突き当って左右に伸びる曲がり道の、はじめ彼女が向かおうとした方…左側に、その黒猫は座っていた。

必死そうに呼んでたから…という彼女の言葉を聞き、
「…どうしても気になるのか?」
タロウが口を開く。
「…でも、そっち行くのは危ないからダメ…。」
頷く彼女に、心配する結蘭だったが、
「なら、明日、オレが一緒について行けばいいだろう。オレの見た目じゃ、近寄る人は、あんまりいないからな。」
このタロウの提案に、口をつぐんだ。
「…それに、オレも気になる。」


――――― 翌日、14時


…あ~~ん!

今日も響く、あの黒猫の鳴き声。その猫の後をついて行くべく、外階段の前に集合した二人。
「…こんな顔してるの、見たことあったか?」
「昨日とか一昨日、私に鳴いてるとき、ずっとこういう顔だった…。」
口を大きく開けて、こちらに何かを訴える顔。その黒猫の様子を見て、タロウも不思議がっていた。
いつも猫たちの様子を見ている者としては、彼も放っては置けないのだろう…。

そうして二人がついて行くと…。また昨日と同じ、廃れたアーケードの中へと導かれていた。
「ここに何かあるのかね。」
「そういうことなんだろう…。」

ゆっくり、ゆっくり、歩いてついて行くと、やはり、あの、彼女が昨日男たちに絡まれたところへ…。
「…ここをまっすぐ行くのか…。」
タロウは少し、立ち止まって考え込んだ。
「…昨日…あの人、この先はちょっと危ないって言ってた…。」
「うん、そうだ。駅直通の通路があるんだが…。そっちに、行かなければ…。」
再び歩き出す彼だったが、また少し考え事をしているようだ…。
そんな彼の様子を見て、さすがに彼女も不安に思うが、お互い気になっているとわかっている手前、なかなかやめようと言うこともできなかった。

だが…案の定、黒猫が導く先は。

「…おい、そっちに行くのか…?」
小さな段差を降りる階段があって、タイル張りの床、奥に向かって所々壁に照明がついている、薄暗くて何もない通路…。
「…これが駅に行く通路?」
「…そ、そうなんだ…。」

黒猫は、通路に入って、少し奥でまた座ってこちらを待っている。
一体この黒猫は、二人をどこへ連れて行くつもりなのだろうか…。
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