八章


数分前。

「普段は…義理の兄と姉のところに住んでます。」
怪しい雰囲気はないとわかったので、ミミドリは、帰るためにも、そこへ来た経緯や自分のことを話していた。
「…アンタ、もしかして…。」
「…?」
すると、話を聞いていたその人は、唐突に何か思い当たることがあったように考え込み、質問した。
「人違いだったら悪いんだけど…結蓮とこのお嬢さん?」
…急にではあるが、帰るべき場所をすぐに言い当てられたことで、安心感が心に降りてくる。
「…そ、そうです!」
「やっぱり、ドーリでそんな感じがすると思ったわ。なら、今電話してあげるよ。」

そんな訳で、成り行きだが彼女は帰る術を見つけたのであった…。


「もしもし?アタシよ。アンタの妹ちゃん、今こっちにいるわ。」
『あら、そこにいるの?そんなところまで行って…。』
「うん…ちょっと遠いわね。一人じゃ危ないから、誰かこの辺まで迎えに来て欲しいんだけど。」
『そうね、わかったわ…。』
「…あんまり怒らないであげてね。無事だったんだから。」
…一人で歩いてしまったことにお咎めはあるだろうか…。そう思いながら、受話器を握るその人をしばし心配そうに見つめるミミドリ。
『今、結蘭と、もう一人、友達に迎え行くように言ったから。しばらくお願いね。』
「いいわ。待ってるね。」

ホッとした様子で、その人が受話器を置き、こう言った。
「…よかった。でもびっくりしたわ。アタシ、リタっていうの。結蓮の友達よ。」


――――― その頃。


廃れたアーケード内の薄暗闇の中、黒猫が歩いて来る。
…彼女が本来向かおうとした先の暗い道から。

戻ってきた黒猫だが、呼んできた人間がいなくなってどうすることもできなくなっているようで、まるで人間が途方に暮れたときのような様子で、その場にとんと座って、しばらく動かなかった。
それは、どこか、呼んできた人間がまた戻ってくるのではないかという期待を抱いているようにも見えなくはなかったが…。

数分が経ち、そこへやってきたのは。
「…この辺か。」
「あ~、この辺曲がれば着くはず…。」

タロウと結蘭だった。
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