七章
同じ頃。とある軍施設にて…。
「証拠が一向に見つからないってのも、なかなか変な話だな…。」
小さな部屋で机の前の椅子に座って、悩むハリーの姿がある。
「…まぁいい、今度、僕ら軍が調査に入る。君にはすごく感謝してるよ。」
向かいに座るクールも…。表情には出ないものの、まだ自分に何かあることを予期して、頭を回す。下手に手を出せばこちらが先制となる以上、まだ何もできない。
…思っていたより流れはスムーズだった。自分に声をかけてきたことには絶対に裏があると思っていたのだが…。
おまけに隊長には素直に感謝を述べられている。なんだか変な気分だった。
「そうだ、その話は一旦いいだろう…。もう一つ…聞きたいことが…。」
頷いて黙った彼に、ハリーがそっと、別な話を切り出す。その顔は、真剣な、それでいてどこか慎重な様子である。
切り出された話は、自分に何を聞くのだろうかと身構えた彼の想像する内容とは、大きく違っていた。
「…あの子について教えてくれ。」
「…?」
ハリーが口に出したのは彼女のことだろうか…。何故その話を…。そう聞き返したいクールの思考を読んでか、ハリーが説明を始める。
「…何から話せばいいか…。その、これは、今の話…君との関係にも、ほとんど無縁な話なんだよ…。なんていうか…一人の人間としての話なんだ…。」
ため息交じりになってクールが答えた。
「…何か問題でも?」
…ゆっくり話し始めるハリーは、既に、厳格な雰囲気をほとんど持っていない。
「僕にも、あの子と同じか、ちょっと小さいくらいの娘がいるんだ…ホントはね。でも僕は…仕事に専念したくて…家族を置いて…。」
それまで、他人の話を聞かなければならないことを面倒に思っていたクールも、少し疑問を持った。なぜこの隊長が彼女のことを知っているのか。そして、なぜ彼は自分にそこまで寛容なのか。
「あの子を拾った兄妹とは君も知り合いだろう…?あの二人から…初めて聞いたときはさすがに僕もあの子を心配したよ…。でも……。」
聞いている間に嗤いを誘われ、「内通かよ。」と鼻で嗤って見せるクールだが、
「…ほら、カルロスを確保したときさ、そこで君を見たんだ…。そしたら…。僕も、家族を思い出して…。」
それまで、目の前にいるのが軍隊だと不安に思っていた彼が、そんな話か、と安堵していたのも、また事実だった。
「今は、その家族との関係も、あんまり良くない…。当たり前だけどね…。でももし、少しずつでも…関係回復ができるならと思って…。いろいろ、考えてたんだ。」
悩みながら話をするハリーの口から出る、「…ああいう歳の子には、何がいいんだろうな…。」という質問に、彼は笑って言う。
「あいつは普通とはだいぶ違うよ。」
その言葉に、驚きと疑問で呆気に取られているハリーの顔を見ながら、続けて…。
「あいつの趣味は通用しないと思うぜ。」
...
