七章


「アンタら、またそうやって通行人囲んでるわけ?」
自分を囲んでいた男たちは皆、道の先、声が聞こえた方を見ている。一人が小声で、おい、と仲間たちに告げた。そして、男たちはさっさと逃げていく。

誰が助けてくれたのだろう…?
道の先を見ると…そこからゆっくり歩いて近づいてくる…そこそこの筋肉のある、男?の人だった。

「まったく、あいつら困っちゃう。アンタ、この辺の子じゃないわね?」
「え、あ、はい、ありがとうございます…。」
話しかけられて咄嗟に返事をした。
「迷子になったの?」
「…えっと…はい…。」
「…う~ん…。とりあえず、アタシについておいで。落ち着いてから考えましょう。」
…見たところ、悪い人ではなさそうだが…。ついて行っていいものか迷う。
ただ、そうは言っても。ここから自力で帰るのも今はきつそうだった…。
「…でも、いいんですか?」
助けてもらった手前、なんと返事をしたらよいか戸惑うが、
「アタシの店よ…。アンタはここに入ってくるの初めてでしょ?見ない顔だからすぐわかるわ。ならまず安全なところに行かなくちゃ。」
それを聞いた彼女は、見失ってしまった黒猫へ、心の中で、ごめんねと、それだけをとなえる。
「あ…ありがとうございます…。」
そして、その人のあとをついて行くのだった…。



一方。その少し後…。

「…収穫はなしか。」
どこかの暗がりの中。
歪んだシャッターの下の隙間をくぐり抜けて、黒猫が入ってきたところを、一人の男がさっと捕まえ、抱き上げた。
抱き上げられた黒猫は、嫌がって時折唸り声を上げながら、今にも暴れだしそうな雰囲気を醸し出している。

そこは、廃駅の改札の前。
シャッターを入ってすぐあるカウンター、まだ駅が使われていた時代に係員が座っていたはずの小部屋の中から、小さな鳴き声が響いた…。
黒猫は暴れて男の腕から逃げ出し、走ってまたシャッターの外へと出ていき、男は爪を立てられた痛みに舌打ちをして、その小部屋の中へと入っていった。

小部屋の中には、少量の猫用餌とケージが置かれており、そのケージの中で、あの白猫が鳴いていたのだった。
「…はいはい、ちゃんと終わったら逃してやるから。それまでの辛抱ですよ。」
男はそう言ってケージに指を入れるが、怯える白い猫は見向きもせず、黒猫の声に反応したのか、しばらく鳴き続けていた…。
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