一章


その数日後。
時間になりクールが外階段の下まで来たとき、ドアの鍵を開けてミミドリもまた少し降りてくる。
「…久しぶり。」
それだけを言った彼女には、言葉が見つからないのだ。
「うん…。」
「入る?」
緊張をあまり表に出さないようにしていることは、なんとなく彼には見破れていたが…。

彼が何も言わずついていった彼女の部屋は、以前から少しだけ、変わっていた。
二種類の機械が入っている棚と、その上に数本積まれているディスクが、その変化を物語っている。
「短期間でずいぶん揃えたよな。」
彼が笑いながらそれを指摘すると、
「…あの二人が奮発してくれたから…。」
彼女もまた笑ってそう言った。

以前は間近で見たことがなかった彼女の遊んでいる姿やゲームを見ながら、そのルールを理解していくうち、次第に興味が出てそれらを面白いと思うようになったが、自分自身が変わっているという明確な自覚はまだ少ない彼であった。
そして、同時に少しずつお互いの緊張が緩むのを見ている気がした。その日は、やっと落ち着いてきた彼女の様子を見て、彼も安堵していたのだ。
そんなに気を張るような相手ではないこともわかったので、彼はあまり冷たくはならなかった。

彼らはこの日、実に二週間ぶりの再会を果たしたことになる。
これからはあまり未来のことを心配しなくてもいいのだと、彼女もまた安心していた。
彼が別れ際、
「またそんなに日が空かないうちに来るよ…。」
と言い残して行くのを見送りながら…。


…だがそのほんの2日後のこと。思いがけず事態は急変する。

「…それで…そうだな、単刀直入に言う。」
いかにもこの治安の悪い地帯とは正反対のように見える、管理の厳しそうな施設の中、受話器を握る一人の軍人の姿。
「もし何か持ってる情報があったら…教えて欲しいんだが…。」
一体誰と。何の用件で。話をしているのか。
「…うん、そうか…さすがにアンタでもわかることはない…となると…そうだな、ちょっと待ってくれ!」
それは、時期にわかるだろう。なぜなら…。

「…話をさせてくれないか…。あぁ、もちろん今回はこっちからの頼みだから、安全確保できる場所を用意する…それでどうだ?」


とある日の正午。
路地から何者かを拾い載せた黒い車が発進する。狙われてもダメージを多少軽減するためなのか、すぐにその周囲に現れる何台かのダミー車。
部屋の窓から、その黒い車の集団を見たミミドリは、そんな光景はこれまで見たことがない故か、少しそわそわするような、恐ろしいような、よくわからない興奮状態になっていた。
「すごい…黒い車いっぱい…。なんか不吉…。」
「うん…あれはね、軍が管理する車なのよ。」
結蓮は、その通る瞬間を見てこそいなかったものの、彼女が呟いたものでもう何かがわかったといった様子で、開いていた扉の手前、廊下からそう教える。
「でもね、それが走ってるってことは、何かまた変なことでもあったのかねぇ…。」
まさかね…。とそのあとに言って見せる結蓮も結蓮で、落ち着いた調子でいつつも、不吉なものを感じているのは事実であった…。
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