五章


その頃。とあるどこかの、静かな古びた会議室…。

「…だから、なんでお前はあの時ちゃんと引っ張らなかったんだって聞いてんだよ。」
「はいはい。すいませんでした。」
二人の男が話すその場の空気は、静かながら、苛立ちとどこか不穏な空気で溢れかえっている。
「あんまり傷つけんなって話だったでしょ?」
「それは別だっつの。」
「…何がよ?」
「何がって。連れてくんのが先だろ。」

そう言う一人の男の頬には、小さな絆創膏があった…。
対するもう一人は、その男の言うことに、大きなため息をついて、返事をする。

「…アンタは欲がないんだねぇ。」
「はぁ?」
「乱暴にするとあれの見た目に傷がつくの。わかんない?」
「知らねぇ。てめぇがやんねぇから、仕事になんねぇんだよ。欲がなんだって話はどうでもいい。」
「…ホントにそうかねぇ。っていうか、そういう奴に限って怪しいんだけど。もしかして…?」
嗤う片方に、もう片方は苛立ちを隠さず舌打ちをした。
「うるせぇよ。てめぇが足引っ張って失敗したんだから責任取れっつってんだ。」
「わかったわかった…。」


――――― 猫の路地


「…ケンカしようとしてたわけ?」

結蓮が来たことで、頭の空回りを起こしていたミミドリに助け船が出されていた。
結蓮に気付きそちらの方を見たクールとタロウは、依然として険しい表情を保ったままだったが、しばし黙り込む。
「お互い、この子の大事なトモダチね…。これでもう怪しまなくて済むでしょ?」

二人にわかるようにそう言って聞かせる結蓮。しかし、そうすんなりとはいかなかった。
…特に、クールの方は。
「なんで外野のあんたがそんなこと言えるんだよ。さっきの話をもう忘れたとは言わせねぇぞ。」
その言葉に考え込む結蓮に、「こいつのこと知ってんのか?」と追い打ちをかけるように聞く。

「あの子は私たち双子の親友なの…。もう長いこと一緒にいる親友ね…。だから私も疑いようがないのよ。」
そして、堂々とそう答える結蓮を、揉めた二人の間の位置から見ているミミドリは、またしても何もできることがなく成り行きに任せるしかない自分自身にもどかしさを感じていた。
そんな彼女の気持ちを察してか、タロウが口を挟む。
「オレはただ…怪しい奴と関わってるのが、心配だったんだ…。」
「…でも、この人もしばらく一緒にいたから、大丈夫よ。私達もいるんだから…。心配しないで。」
…そうやって信じ込むのが危ないというのに、よくそんなことが言えるものだ…そう呆れ、感心しているクールは、口には出さないまでも、ため息をついて肩を落とした。
それを見た結蓮は、二人に向けてこう言ったのだった。

「お互いのこと、ウソだと思うなら、もうしばらく様子を見てみたらどうなの?それで何かあったら対応すればいいでしょ?」

...
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