五章
咎められるわけでもなく、思わず笑ってしまう話の流れに着いたところで、なんだかいつもの道とは違うことに気付く。
二人は、繁華街とはまた違った危険さのある、時折ラクガキの目立つ、寂れた道を歩いていた。
おそらく、繁華街からシャッター街に変わったあと、繫華街とは逆向きに続く道と繋がっているのが、この辺なのだろうか…。
「…ここ…。」
「…あ~、そこ…知らない?」
そう予想したところで目に入ってきたのは、横に長い大きな建物と、手前に見える地下へと続く階段。
その階段には、両側の錆びた手すりに鎖が何周かかけられている。建物の、その階段の上に覆いかぶさる部分の照明は、もう既に機能しておらず、階段は徐々に暗くなっていく世界へと繋がっていた。
「もともと地下鉄の駅だったとこだね。もう廃墟になって長いこと使われてないけど。」
「地下鉄…。」
階段の鎖を見ながら、なんとなく…地下鉄という単語を聞いて思い出せることを思い出していたが、
「でも、入んない方がいいよ。変な人いっぱいいるよ。」
男の言葉を聞いて、まぁそうだよなぁ…と彼女も内心想像し、納得する。
「道はね、もうちょっとで着くよ。」
数分後に目的地に着くと、またも以前目にしたことのある男達が待っていた。
「…あれ?お前、それ…。」
「連れてきたよ。」
まだ少し恐れた様子ではあるが、軽く会釈をする彼女を見るや否や、皆道を開け、彼女が一番最初に座ったアクション系列の筐体の前に招いた。
凶暴そうだという想像とは少し違って、気さくに話をしている他の仲間たちに、どこか、元いた場所での思い出がまた蘇っていく。
「そういえば、同じ眼鏡だね。」と突っ込む外野に対して「おいおい、この子はダテじゃないんだから。」と男が返す。
「え?ダテなんですか?」とミミドリがツッコんで、周囲も笑っていた。そうしているうちに徐々に打ち解ける。
しばらく、ゲームをするなり、喋るなりして時間が過ぎたあと。
「帰りは?どうするの?」
「あ、一人でも大丈夫です!」
…聞かれて、とっさにそう答えてしまった。というのも、彼女は人見知りなので、まず初めからそこまで送られて帰るということは選びにくい。
それに、彼女には、もし送られた経緯で何かあったらまずい、という警戒心もあった。
「ホント?道は?」
「覚えてるんで…。帰れますよ。」
「そ、そっか…。気をつけて!」
…これはあくまで警戒心からの選択だ。急いで帰ろう。そうすれば大丈夫だ…。そう思っていた。
しかし、その帰り道。
そこそこ広いとはいえ、やはりグラフィティだらけの路地は、静かで、建物も比較的高くて…恐怖心が抑えきれない。
繁華街の方へ行く選択肢ももちろんあったのだが、彼女には、とても一人で歩ける場所ではなかった。それは彼女自身もよくわかっているうえに、怖そうな集団が目に見えてわかる場所は、彼女もとても通る気になれないのだ。
そんな思いから、消去法のような形で反対方向を選び、錆びれた通りを一人で歩いていると。
「ねぇ。ちょっと。そこのお嬢さん!」
案の定…。まさに心配していた通りの出来事。すぐ後ろから、声をかけられた。
どうしたら良いのか判断に迷っているうち、ゆっくりと手を引かれ、狭い路地へと誘導されていく。
「ちょっと付き合ってよ。」
「…え…。」
このままついていくのはまずいとわかっているのだが、逆らったら逆らったで何かありそうな気がして、どう対応したらいいのか、よくわからない。
そして彼女が迷っている間にも、声をかけてきた男は、断らないのをいいことに彼女を路地の中に連れ込む。
