四章
一方…。その日の夜。
「今日はいないか…。」
「やっぱりたまたま来ただけじゃないの?」
例のゲーセンの一部は、昨日現れた女の子の話題で盛り上がる。
「そんなことないよ。あんな普通なのが、今更だよ?」
「偶然はおかしいって…。」
だが、いい話題ばかりではない。当然、彼女の隣にいた彼についても、一部で話が上がっていた。
裏で名を馳せる存在なのだから無理もない。それに気付いた者も多いのだ。
「…あれ、一緒にいたってことは…そういうこと?」
「いや~、なんか裏あるでしょ。だって…そういうのじゃないよね?」
「…人違いじゃねぇの?」
「んなわけあるか。あれ絶対そうだよ…。」
こちらが怪しまれると厄介になりそうであることは、当然この男達もわかっていた。
しかし、どうしても気になった男一人は、考えるのを諦めきれない。
そこへやってきたのは、昨日二人を見ていた、あの眼鏡をかけた男だった。
…口をついて出たのは、ある提案。
「…今度さ、後ろついてってみない?」
「はぁ?バレたらどうすんの!」
「大丈夫だって。ちょっと!外出てちょっと!バレないように、追いかけるだけ!やろうよ…。」
――――― その二日後
深夜、廃病院のA棟の屋上に見える、黒い影。
クールはそこに中庭らしきものを発見し、監視カメラが無いかどうかを確かめて下に降りるのだった…。
綺麗な正方形の形に作られている中庭の、建物に沿った植え込みの規則正しく手入れされている植物と、中央の植え込みからもさもさと湧き出るような生え方をしている植物。
その中央の植物は、外周のものと違って、周囲の地面にまで、広く、長く、伸びていた。外周と中央の植え込みの間に敷いてあるコンクリートが、中央から広く茂る植物の影響で、ほとんど見えていない。
隠れた地面を少し疑って、葉をどかし覗く。するとそこには、おそらく地下へのものであろう、大きなハッチがあった。
…やはりそうか。と、思ったのも束の間。
背後に黒い気配を感じ、飛び退く。
中庭中央の植え込み越しに向き合う形になり、暗いながらもその人物を直視した刹那。
長く伸びた前髪に、大きめの黒いマスク。それは、前に侵入したときこちらを探りに来たのと同じ顔。
その男がダガーを握りしめ、飛びかかり襲おうとするのを避けて、クールは直角になった壁を蹴って登り、どこかへと飛び去った。
敵の命を取り逃したその男は、ふぅ…と、焦りと不愉快さの混じった一息を吐き、扉から建物の中へと消えていくのだった…。
