四章


だが、二人が去る時にちょうど…このゲーマー溜まりへと合流する彼は、
「…新しい子?」
全く怪しい雰囲気のない…それは気さくそうな男であった。
他の男達もそれに応え、彼女のことで話を始める。
「珍しい…女の子だったよな?」
「こんなとこに来るって…どういう…。」
「しかも、今まで見たことなかったってことは…。今日が初?」
二人が去った後も、男はその話の中に混ざりつつ他の者達と笑い合っていた…。

そうして一通り男たちが掃けて、またそれぞれが元のエリアに戻りかけた時だった。
彼女がいたアクション系列の筐体から飛んだ声で、雰囲気が一変する。
「あれ?あ、もしかして…。」
「…これ!ランキング埋まってんぞ!」


その夜。
あの攫われて帰ってきた日以来、二人は初めて一緒に寝るのだ。
布団に入っても緊張を隠しきれていない彼女だったが、彼はふと数週間前を思い出し、彼女に片腕を広げた。
それを見てもなおぎこちない顔をしている彼女の背中に手を置いて抱き寄せると、「前もこうやって寝てただろう。」と言った。

そしてついに口を開いた彼女が、気になっていたことを聞き始める。
「…なんで手繋いで歩いてるの。」
聞くのにはかなりの勇気が要ったが、引き伸ばすと回りくどくなりそうだったので、言おうと思ったときに思い切って単刀直入に言い切ってしまった。
彼はしばし考えてから、「…こうしたかったんじゃないの?」と聞き返す。
戸惑って言葉を詰まらせた彼女の言いたいことを何となくわかった上で、次にこう答えた。
「…一人だと間違いなく攫われるからだよ。」
「……うん。」
その答えを聞いて彼女も納得する。
「誰に連れてかれるかわかんないだから、外歩くときはちゃんと手繋いどけ。」
そのあと、彼が穏やかだったのを見て安心したのか、彼女は冒険をした疲れですぐに眠ってしまった。
片腕を軽く彼女の背中に回して抱いたまま、彼もまた徐々に意識を緩ませ、眠った。

…以前なら誰のことも深く信用することがなかったが、今、彼女へは別の気持ちを持っていることに、気づいているような気づいていないような。そんな気持ちで…。



翌朝。目が覚めてからも、二人はしばらく布団にくるまったまま、時折昨日のようなやり取りをしていた。
彼女が返事をしつつ、もう一度顔を埋めている間に眠ってしまったのを見て、彼も笑う。
穏やかな幸せがどういうものなのかわかりつつある彼には、彼女がとても愛おしく見え、別れなければならないのが名残惜しかった。腕の中でうとうとと、眠っては目覚めを繰り返していた彼女の額に唇を落とし、そのまましばらく止まった。
寝ぼけながらも気恥ずかしそうにする彼女を抱きしめて、また会いに来るよ、と言う。

少し寂しくなったのか、ゆっくり彼を抱き返し、何か言いたげな彼女から発せられたのは「帰ってきてね」という言葉だった…。
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