何も特別なことはない2月の行事

「ねぇねぇ!」
「……。」
この女。
「遊び行こ〜。」
「…は?」
…俺が誰だかわかってねぇな。

ちょっと繁華街に繋がる路地にいたら声かけて来やがって。これだから俺は普段来ないっていうのに…。

「…行かねぇよ…。俺は今忙しいんだ。」
「なんでよ〜。」
「いいじゃん。」
「うるせぇ。勝手に来たくせに粘るな。」
路地奥に行こうとして、緩く手を掴まれて引き止められる。
「せっかくのバレンタインだよ?」
「あんまり怒らせると痛い目見るぜ。」
振りほどいて半分本気でナイフを見せた途端に怯えて、一人がもう一人を制止して留まった女二人を、そのまま置いて、さっさと繁華街とは逆の路地奥に歩いた。

煩わしい。
ああいうバカみたいな女を見てるとイライラする。どうせ見た目、遊び…。その辺しか目的にない女。
だから通りたくなかったんだよ。
…特にこの季節は。

あんな遊び人に時間を取られてたまるか。


裏区画、歩く途中の明かりの漏れる古い建物の窓からは、男女の黄色い笑い声が聞こえた…。
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