確かに恋人だけど……

……クールだ。
「…あ?あんたがこれのツレ!?」
呆れ笑いなのか焦り笑いなのかわかんない調子で、男の人の一人が聞いた。
「そうに決まってんだろ。」
「…怖がるでしょフツー。」
「その感じじゃ、貴様らの方が怖がられてるな。」
「…っ!」
流石だよ。私はろくに言い返せないのに。
「…わかったら返せよ。」
そうやって言い返せなくなった一人にクールが詰め寄る。
でも、それが引き金だった…。

「…でもホントに恋人だったらキスぐらいできるよね。」
「………!」

もう一人に、ヘラヘラした調子でこう言われてしまった…。いや、確かに恋人だけども!そうなんだけども!こんなとこで!?でも、しないと助からないのか…!?
更にもう一人が「お前。」って、こっちもヘラヘラ笑ってるけど。
「そっちにいたらできねぇだろ…。何回も言わせんじゃねぇ。さっさと返せ。」
「「「……。」」」
苛立ってるというか呆れてるというか、そんな感じでため息つきながらクールがそう言うから、そのまま私は背中を押されて返された…。

腕伸ばしてちっちゃく、こっち来な、ってしてる。また掴まれたりしないうちに、と思って、何も考えずに帰った。
……というか、何も考えられなかった。
肩と背中に腕回されてさ…。
その瞬間…するんだな~と思って…。
……頭が真っ白だったけど、目瞑った。


後ろの方でコソコソ、もういいよ、って言いながら男の人達がいなくなったのを、なんとなく感じた。


男の人達がいなくなって、しばらく経ってから…。離されても、肩に両手置かれて、
「ま~、とんだ災難でしたねぇ。」
わざとらしくそう言われて笑われた…。
「助かったから良かったけど。」
「…………。」
…まだちゃんと顔見られない。
たぶん今、私は下を向いてる。たぶん。もうどこ見てるかわからないぐらい、意識がごちゃごちゃで。
また静かに笑われてる。心臓破裂しそう。
でも、いつまでもこんな状態だからだろうけど、肩ポンポン叩かれて目覚ましとも追い打ちとも取れる一言をかけられた…。
「ほら、いつまでもそうやってると、もう一回やるぜ~。」
「……う~ん……。」
……それはカンベンして……。
そう思ってなんとか顔をちょっと上げて。右手を出して。歩き出すのかな~と思ったんだけど…。

出した右腕を緩く引っ張られて、またもう片方、背中に腕回されたんだよね…。
やられた…。嘘つき。ずるいな…。
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