確かに恋人だけど……

ちょっと離れてて、今は一人で、狭い路地みたいなとこで、クールを待ってる。
変な人と目があっても嫌だったから、景色を見る気にもなれなくて、壁に背中をもたせかけて、携帯見てたんだけど…。
「……ねぇねぇ……!」
遠くから呼び声がして、聞こえただけでヒヤヒヤした。

…自分なのかな?
でもよく知らない声だった…。
知らないふり貫いてたら、なんか数人でコソコソ喋ってる。聞こえてないとか、無視してるとか言ってるのかな…。考えすぎ?
そっち見たわけじゃないから誰に声かけたのか分かんないし…。自分だったとしても聞こえなかったふりしてればいいかなと思って…っていうか、そっち見たら終わりな気がして…ずっと携帯見てた。

でも、そうはいかなかったんだよね。
「…ねぇ。ちょっと。」
「…!?」
私よりちょっと背高い、見た目がチャラそうな男の人が、すぐ横まで来てた。
……思いっきり、呼ばれたの私だったよ。

たぶんこの人……なんかやばい……って、とにかく離れようと思って歩き出そうとしたら、すぐ肩掴まれて。
「無視しないでって。」
「…それ見てたし暇じゃん。」
「なんでこんなとこいんの?」
「………!」
マジで…!?なんて返したらいいんだよこれ!?どうしよう…!?ってか、一人じゃない、三人いるよ…。怖…。ただでさえ元いたとこでもコミュ力なかったのにさ…。こういうのに慣れてなさすぎるんだよ…。
「遊び行こ。」
「え、ちょ…。」
「そっち見るよりオモシレぇから。」

ふざけた感じで言われてるけど。どんどん逃げ道無くされてる。振り返ってダッシュで逃げようと思ってたけど、背中から腕絡まされて、これじゃ走れない…。

「…あ、あの…。」
踏みとどまろうとしてみたけど…。
「なんで?暇なんじゃねぇの?」
「ね~!早く!」
「………。」
……だめだ。完全に一人に後ろ回り込まれてる。

そのまま路地の奥の方に連れて行かれそうになった…ところで。
「…おい!」
「っ!?」
馴染みのある……でも、ちょっと怖い感じの声が、聞こえた。
「…ヒトの女に手出しやがって。」
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