魔の記念日、唯一の幸せ

10.31. P.M.18


今追いかけてるのは、あのよく見かけた奴で間違いない。こんな地下水道を通るんだから、まずまともなのじゃないだろう。
奴の目的地は、地下水道の奥にあった。足場と足場にかけられた板を渡って、奴が入っていった、行き止まりの開けた場所にあるアジトの小屋に近づくと、話が聞こえる。

「…いいじゃねぇか。こっちにゃカネがあんだからよ。遊び行こうぜ。なんせ今日はハロウィンだ…。」
「バカ…。今外出りゃ頭がねぇ奴に殺されんぞ…。」
…今やられようとしてるのに。笑わせるぜ。

「脳がないのは貴様らの方だ。」
そう言って俺は小屋に入った。

◆  ◆  ◆

10.30. P.M.20


俺はあいつに会いに来たついで、結蓮のバーにいる。
「明日、ハロウィンね。」
「…どうせまた騒がしくなんだろ…。」

別に俺がそんなこと深く考えるような人間でもないのは知ってるだろうに…。この街がどうなるのかだって、俺が知らない訳がない。
また面倒なことをいちいち思い出させんな…。

「…もしかして。ホントに忘れてる?」
含みのある言葉をかけてくる結蓮が鬱陶しい。
「……何だよ。」
「誕生日。あなたの。」

思い出して声が漏れるぐらいには、自分でも忘れてた。っつうか、もうどうでも良かった。こうなる前…昔は、誰かといたような気もしなくもないが、そんなこと思い出す必要も、生きててよかったと思うこともなかったから、今はそういう感覚が無い。そもそも、これが本当の誕生日なのかどうかすら怪しいところだったが、そんな面倒な日が誕生日だなんて、何の祝いにもなってないだろう。
…現に俺は、明日…。

思い出しかけたところで…自然とため息でも出てたらしい俺を見て、結蓮が…。
「後で二階に行ってやってよ。」
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