三章

3...

「……?」
ふと、ミミドリが意識を覚ますと、もう既にまずいという感覚があった。
椅子に座っている状態で、手は、おそらく後ろの椅子の背の部分で、縛られている。
何か布のようなものを巻き付けられて視界を奪われており、周囲を確認する術も、音しかなかった。
しかし、おそらく自分が閉じ込められている部屋…その場所は、至ってずっと静かであり、少し寒かった。
この感覚だけで、もう死ぬんじゃないか、という、不安のような恐怖のような感情でいっぱいだった。

前日の夕方、彼女は入り組んだ路地へと迷い込んだ。その路地で、出ようと歩いていると、その進行方向を、一人の少年が塞いだ。
ただでさえ、暗い場所で目の前に誰かが現れるだけで恐怖だというのに、その少年にどこか心当たりがあった彼女は、一瞬にして足が凍った。
だが、気を配るべきはその少年ではなく、背後。
ゆっくりと歩いてくる少年を見つめ、うっすらと、背中に何か気配を感じたが、彼女は怖くて振り向くこともできない。
そして、気配がすぐ後ろに迫ったとき、背後から伸びた腕に一瞬にして捕らえられた。
片腕で口元を抑えられ、もう片腕で自分の両腕を抑えられると、どんなに抜け出そうと力を入れても、無駄に終わってしまう。捕らえた腕の力は、強かった。

…薬でも打たれたのか、その辺りからの記憶がはっきりしない。
そして、ここはどこなのか。何が起こっているのか。今はあれからどのくらい経ったのか。自分はこれからどうなるのか…。
その全て、わからない。
視界が塞がれていることにより一層恐怖を感じるが、両手も使えない以上、それをほどくこともできなかった。

『この世界は思ってるより危ない』という、彼からの言葉。
何のひねりもない。言葉そのままの意味だ。それを、わかっていたつもりだったが、気が揺らいでいた。
あの言葉も、頭では分かっていても、心ではわかっていなかった。辛くてずっと引きずっていたんだ。
連れていかれる時は、必死に体に力を入れても、相手には勝てなかった。
自分はとても弱くて無力なんだった。いとも簡単にこうして連れてこられてしまったんだから……

…そもそも、今更あの言葉の重さを実感したところで、きっともう遅い。

寒さと恐怖に震え、そんなことを考えることしかできない。
いつまでこの状態なのだろう?ひょっとしたら、死ぬまでこのまま…?


扉の開く音と、人の気配。
「……起きてる?」
知らない男の声だった。
視界を塞ぐものを今すぐ外したい気持ちに駆られるが、そんなことはできるはずがない。

そして、おそらく前にいることは確かだろう、その彼が発した言葉で、彼女は絶望した。

「…王子様は、死んだよ。」
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