二章

「あの人…あの子に危ない目に遭ってほしくないって言ったんだって、これがどういうことかわかる……?」
「…そういうこと…言う奴なの…?あいつって…」
「だからよ……こうなること、わかってたんじゃないの?」
ユイレンはまた涙を流しながら言った。
「あの子、あれから、辛くて、泣いてたの……!もう、一週間くらい……」

そして、その横で、ハリーは考え込んだ。
……自分が置いてきた、大事な家族のことを。
この仕事を続けたくて。それでも家族も大事で。どちらを選んだらいいか、本当はわからなかった。
でも、仕事を続けると言った。
この際嫌われてもいいと思って。
ただ、それはとても辛かった。慣れてしまってからは仕事だけに集中していたから忘れていたが…

「…ねぇ、ハリーさん、あいつを助けることって、できないの…?」
兄が涙を流す横で、妹がハリーに訴える。
「もし、二人とも助けることができなくても…せめてあの子だけは捜して…?」

そして、ハリーは、しばし応える言葉に迷ってから、こう言った。
「…わかった。とにかくあの子のことは、全力で助けるつもりで捜して、ここに返すよ。」


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「こいつ、昨日俺を狙ってきた…!」
「…なんだと?」
クールが押さえつけた少年を見た灰児が、言った。

「反撃しようとしたら逃げやがって、どこに行ったと思ってたんだよ……」
「…貴様まさかカルロスの下っ端じゃねぇだろうな…?」
問い詰めると、またも少年は不気味に笑ってから、「あたりだ…」と静かに言った。
「殺すように言われた、だから来た……」

舌打ちをするクールと、苛立ちながら問いを投げる灰児。
「じゃあお前…カルロスがどこにいるか知ってんだな…?吐けよ…!」

すると、その少年はこう言う。
「…今日の夜に、俺のこと、三区のAのビルの最上階で、待ってる予定だった……」

そして、それを聞いて二人が一瞬黙り込んだのをいいことに、すぐに体に力を入れてクールを押しのけ起き上がり、後ろに飛びのいた。
今度こそ本当の死を覚悟するかと思ったが、そういうことではなかった。


「…俺を殺さなかったこと、後悔するなよ…」
クールに対し、少年はそういって、笑いながら自身の持っていた刃物で、自殺した。
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