一章
夜。
「…え?どうしたの…!?」
ドアを開けたユイレンの目の前にあるミミドリの姿は、想像とは違うものだった。
ベッドに座って、泣いている彼女を見て、何かあったんだと思わないわけはない。
「なんで泣いてるの…?」
隣に座って、彼女の背中をさすり始める。でも、彼女は首を横に振った。きっと複雑なことがあったんだと、そうユイレンは思った。
「……いっぱい泣いて、落ち着いてからでいいから…。教えて。」
「……ごめん…」
そうして少し落ち着いてきたとき、「あのね」と、まだしゃくりあげながら切り出した。
「クールに…会った…」
「…え!?」
ユイレンは一度、彼女に何かしたのかと思ったが、
「…危ないから…関わるな…って……」
「あの人が言ったの?」
「うん……」
「それは…」
ここまで聞いて、クールが普段はそんなことを言わない、ということにまず気付く。そして、
「危ない目に遭わせたくないから、ってこと?」
「うん……」
「……お別れなの?」
「……」
――――― そっか…。あの人も悩んでんだなぁ……。
そして、ユイレンは「切ないねぇ」と言って、ミミドリを抱きしめた。
あの人もあの人なりに悩んでることがわかった。それに確かに選択としては、それが正しいことだ。関わらない方がいいのを知ってるんだ。
でも…。
「……でも……いつもは自分のやりたいようにやるのに……なんであの人はこっちを選んだんだろうね……」
…それが、疑問だった。
「そっか、あの人は……あなたのことを考えてるから……あなたが大事だと思ったから……」
じわりと、何かが込み上げてくる。
「きっとあの人も……辛かったよ……」
ユイレンは、彼女を抱きしめたまま、悲しくなって一緒に泣いた。
それから一週間ほど、ミミドリはそのことを考えると涙の出てしまう日が続いた。
ある夜のこと。
「あぁ?なんだぁこらぁ!?ジジイがイキってんじゃねぇよ!」
「ジジイ!?ワシを舐めるつもりかぁ!」
部屋にいたミミドリは、外で怒鳴り声が響くのを聞いてしまった。
「鍛えて歩いとるんじゃ、そこまで言うなら勝負してやる!」
「はぁ!?」
その年老いた方の声は……どこかで心当たりがある気がした。きっとあの空手だけを鍛え続けているという……あの人だろう。
だがその集団の怒鳴り声を聞いたとき、やっと実感が湧いた。
……そうだ、やっぱりここは、自分の元いたところより、絶対に危ないことは確かなんだ。エデンなんだから……と。
その危なさを、まだ十分わかり切っていなかった。でもこの怒鳴り声が本当に怖くて。
――――― いずれ生活していれば慣れるんだろうけど…
そして、それと同時に、「もう関わるな」と言われた意味が、すごく理解できた。
ここにいるだけでこんなに怖くなるのに。クールと言えば、実際にこんなケンカの中心に入ることもあるかもしれない人物だ。
いや、きっと普段ならこんなものでは済まない場所にいるだろう…。普段から命が危ない場所に…。
――――― 本当は抜け出したいと思ってるのかな…
自分とは桁違いに強いから、きっとこんなことで負けるような人ではないんだろうな…。
そう思ってあの日のことを思い出し、今の状況に目を向けると、この怒鳴り声の恐怖ともう二度と会えないかもしれない辛さで、涙が溢れてくる。
それに、助けてもらったのに、自分は何もできない。また振出しに戻ってしまったような、そんな感覚になった。
布団をかぶり、小さくなった。
――――― ……これから、どうなるんだろう?
「…え?どうしたの…!?」
ドアを開けたユイレンの目の前にあるミミドリの姿は、想像とは違うものだった。
ベッドに座って、泣いている彼女を見て、何かあったんだと思わないわけはない。
「なんで泣いてるの…?」
隣に座って、彼女の背中をさすり始める。でも、彼女は首を横に振った。きっと複雑なことがあったんだと、そうユイレンは思った。
「……いっぱい泣いて、落ち着いてからでいいから…。教えて。」
「……ごめん…」
そうして少し落ち着いてきたとき、「あのね」と、まだしゃくりあげながら切り出した。
「クールに…会った…」
「…え!?」
ユイレンは一度、彼女に何かしたのかと思ったが、
「…危ないから…関わるな…って……」
「あの人が言ったの?」
「うん……」
「それは…」
ここまで聞いて、クールが普段はそんなことを言わない、ということにまず気付く。そして、
「危ない目に遭わせたくないから、ってこと?」
「うん……」
「……お別れなの?」
「……」
――――― そっか…。あの人も悩んでんだなぁ……。
そして、ユイレンは「切ないねぇ」と言って、ミミドリを抱きしめた。
あの人もあの人なりに悩んでることがわかった。それに確かに選択としては、それが正しいことだ。関わらない方がいいのを知ってるんだ。
でも…。
「……でも……いつもは自分のやりたいようにやるのに……なんであの人はこっちを選んだんだろうね……」
…それが、疑問だった。
「そっか、あの人は……あなたのことを考えてるから……あなたが大事だと思ったから……」
じわりと、何かが込み上げてくる。
「きっとあの人も……辛かったよ……」
ユイレンは、彼女を抱きしめたまま、悲しくなって一緒に泣いた。
それから一週間ほど、ミミドリはそのことを考えると涙の出てしまう日が続いた。
ある夜のこと。
「あぁ?なんだぁこらぁ!?ジジイがイキってんじゃねぇよ!」
「ジジイ!?ワシを舐めるつもりかぁ!」
部屋にいたミミドリは、外で怒鳴り声が響くのを聞いてしまった。
「鍛えて歩いとるんじゃ、そこまで言うなら勝負してやる!」
「はぁ!?」
その年老いた方の声は……どこかで心当たりがある気がした。きっとあの空手だけを鍛え続けているという……あの人だろう。
だがその集団の怒鳴り声を聞いたとき、やっと実感が湧いた。
……そうだ、やっぱりここは、自分の元いたところより、絶対に危ないことは確かなんだ。エデンなんだから……と。
その危なさを、まだ十分わかり切っていなかった。でもこの怒鳴り声が本当に怖くて。
――――― いずれ生活していれば慣れるんだろうけど…
そして、それと同時に、「もう関わるな」と言われた意味が、すごく理解できた。
ここにいるだけでこんなに怖くなるのに。クールと言えば、実際にこんなケンカの中心に入ることもあるかもしれない人物だ。
いや、きっと普段ならこんなものでは済まない場所にいるだろう…。普段から命が危ない場所に…。
――――― 本当は抜け出したいと思ってるのかな…
自分とは桁違いに強いから、きっとこんなことで負けるような人ではないんだろうな…。
そう思ってあの日のことを思い出し、今の状況に目を向けると、この怒鳴り声の恐怖ともう二度と会えないかもしれない辛さで、涙が溢れてくる。
それに、助けてもらったのに、自分は何もできない。また振出しに戻ってしまったような、そんな感覚になった。
布団をかぶり、小さくなった。
――――― ……これから、どうなるんだろう?
