一章

1...

晴れた日の午後。
今日は、ミミドリがこの兄妹の一員になって、初めて一人で外に出る日。完治してから、もう二週間だった。撃たれたところが良かったらしく、治ってからも、どこの異常もなかった彼女は、二人と共に過ごし、少しずつ明るさを取り戻していた。
「いくらこの安全な地区と言えど、油断はできないから、あんまり遠くに行かないでね?」
二階の部屋で、ユイレンが言う。
「うん。わかった。」
今日、彼女が外に出るのは、外で見かけた猫たちに魚をやりに行くため。
「はい、これ、持ってって。」
お皿をもって、部屋の外側の廊下から繋がる外階段へと出ていく。
「じゃあ行ってくるね。」「遅くなんないでね?」


外階段を降りてその後ろ側にしばらく歩いていくと、そこにいるのは、白い猫。人懐っこいその猫は、ミミドリが持っているお皿を見るとニャーと鳴いて寄ってくる。
「あ、ちょっと待って、まだ、みんながいるところに行ってから…」
下から覗かれて鳴きながらついてこられると、思わずすぐに置いてしまいそうになるが、
「うわ、すご…はいはい、今置くから!ちょっと待って(笑)」
路地奥に集まる猫たちのところまで無事たどり着き、姿を見た猫たちがニャーニャー騒ぎ出した。

そして、そのお皿を持ってまた戻ろうと、彼女が振り向くと、突然 "その時" は訪れた。
「!?」
「……よぉ。」
そこには、金髪の、背の高い男…クールが、建物の壁に寄りかかってこちらを見ていたのだ。
彼はこちらへゆっくり歩いてくる。見るだけで緊張するのだが、あまりに突然のことに焦って何も言えないでいると、
「…思ったよりひどくねぇな。」と言った。
「…あの、助けてくれてありがとう……」
「言っておきたいことがある…」
なんだろう?と思ったが、彼の口からはなんとなく予想した言葉が出てきた。
「もう俺には関わるな。」

―――――  ……そうだ、自分がいたらきっと邪魔なんだ……

だが、次に出る言葉は少し予想外だった。
「お前…俺みたいな奴と一緒にいたら、きっとすぐ標的になる。」「……!」
「それに、ただでさえ疑いかけられることになるんだぜ…?」

―――――  そうか…この世界に来た以上は…

「ここは、お前が考えてるより危ないからな。」
一瞬、もしかしたら彼は面倒なことになるのを避けたいのかと、彼女は思ったが、少し下を向いた彼女に、ため息をついてこう言った。
「……危ない目には遭わせたくないんだよ」
やはり思っていたのと少し違っていたことに、驚いた。
「だから、もう追っかけたりはすんじゃねぇ……離れよう。」
「……うん…」
恐る恐る顔を見たが、何か、その表情も冷たいものではなく、優しいものだった。何かあるんじゃないかと思ったミミドリだが、ただでさえ自分が何か言えるような人ではないと思った彼女は、頷くことしかできなかった。


「…ここまでな。」
外階段の下まで二人で歩いてきて、別れる時だった。
「助けたのは……死んでほしくなかったから…。これは本当だよ。」
この言葉を聞いて、ミミドリははっとする。何かあると思ったが、きっと全部本当なんだと。

そこで、階段に背を向けて自分と向かい合うミミドリのちょっと下を向いた顔を、クールが覗き込んだ。
その目は少しだけ涙目になっていた。小さくため息をついた彼は、顔を反らそうとまた下を向こうとした彼女の頭を、撫でた。

彼女が階段を登るときも、横を見て、歩いていく彼の姿を見ながら、登っていた。そして彼もまた、一度歩きながら振り返っていた。
目が合うと、お互い小さめに表情でさよならを伝えて、また自分の道に向き直った。


暗い色の中に夕焼けの赤さがまだ残る空の下、二人は離れた。
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