五章
「自分のしたことで破滅するなんてのは、皮肉だねぇ。」
嗤いながらそう言う灰児に、「…驚いたよ」とこちらも笑いながら返すカルロスだったが、
銃口を向けた瞬間に撃たなかった灰児に疑問を持ったときには、もう遅かった。
それも灰児の策略だったのだ。
カルロスが灰児の方を見ていた隙に、クールが一気に距離を詰めている。
「…!」
物音と気配で何かを察したカルロスは、手首を掴んでいたミミドリを、捨てるように突き飛ばした。
だが彼が振り向く前に、怒りを込めた蹴りを入れられていた。
「…っっ!」
いくら大男とは言えど、その強い衝撃に、一瞬呼吸が止まるような感覚を覚え、そのままうつ伏せに倒れる形となった。
数秒の間を置き、彼が、背の痛みに耐えながら怒りを暴走させ、起き上がろうと腕に力を入れたときである。
そこには、エレベーターからぞろぞろと現れた、軍隊…。
自分の持つ守備の者たちを使うことなく、この場に侵入を許してしまっていた。
ちらほらと自分に銃を構える隊員。
壁にずらりと並ぶ隊員。
とどめは、目の前に歩いてやってきた隊長の姿だった。
「…お前を確保する。」
突き飛ばされ転んだミミドリは、ゆっくり腕を自分の前に持ってきて起き上がろうとするが、軍隊が大勢でいるのを察すると、その気が失せる。
今の状況が怖くて仕方なかった。そして、自分もこの軍隊に連れて行かれることを、なんとなく悟った。
――――― ……終わった。
しかし、力の入り切らない腕で起き上がろうとした自分の目の前には、クールが屈みこんでいる。
僅かに起こした体を、彼がすくいあげて抱きしめていた。
